*BL Original novel・1*
□ボイスん。レッスンact.2
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「あ、ちょっと待ってください」
スタジオに入る前に宮元さんのジャケットの衿を直した。
いつからこんな…内側に襟が入ったままでいたんだよ…。
って、家を出るときから緊張してて、気が付かなかった僕もどうかしてる…。
当の本人は、ふわああっと大あくびだ。
また最近、明け方近くまでなんか書いてるみたいだ。
先に眠ってしまって…って、寒くなって目が覚めたりするんだけど、布団をそっと肩までかけ直してくれる…なんてするほうが気持ち悪いからいいんだけどさ…。
「通れないんですけど」
うあ!
「あ、すいません!」
「あーん?」
って、神崎マネージャー…。
「いちゃつくのは物陰でやってくれませんか?頭を下げるこっちの身にもなってください」
涼しい顔で僕らの横を神崎マネージャーが通り過ぎた。
「お、おはようございます!あ、あの、台本出来てますか?」
宮元さん!むすーっとした顔しない!
「中に届いてない?取り来て」
「は、はい!」
真っ直ぐ自販機に向かった宮元さんの分もで、二冊くださーーい!!
*
「…マリ…あのさ…」
「………」
「なあ、おい…」
時間が無いから集中して読んでるのに、うるさいなあ、もう!
てか、あなたも読んで下さいよ!
ちらっと壁の時計を見る。
ぎりぎりで台本を渡されることはたまにあるけど、今回は何しろ、台詞が多いんだよー!
きゃ。ここはちょっとやらしい!なんて言ってる暇がないくらい、口が回るかどうかの方が心配ごとなんだ!
「……ボールペンかじるのやめろ」
宮元さんが僕の手からチェックに使っていた赤ボールペンを取り上げた。
仕方なく顔を上げる。
「かじってません」
「かじってましたー!お尻の部分、かじってましたー!」
もう!
こっちは必死なのに、余裕でにやにやして!
「なあ、前もって練習しなくてよかったな、このホン」
「え?」
ボールペンを取り上げられて、寂しくなった僕の口に、宮元さんが、ぽんっとのど飴を入れてきた。
「練習してたら…、マリに犯されるところだったわ」
げほげほげほ!!!!
飴が喉につかえて死ぬ!!!!
今、息止まった!
まじで死ぬかと思った!!!
真っ赤になってる(呼吸困難で!)僕を置いて、笑いながらトイレへと向かった宮元さんをちょっと睨みつつ、いろんな汗をかきながら、また台本に目を戻した。
う、うわあああ!
さっきまでは平気だったのに…。
恋人役が、宮元さんと重なった。
やばい…。