*BL Original novel・1*

□Nostalgic voice
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「いつ帰ってきたんだ?」

とりあえず当たり障りのない会話をしてやる。

「って、俺向こうに1年も行ってなかったし。すぐ戻ってきたし」

今日は汚いつなぎ姿のそいつは、その姿のが見慣れてる。

「内装やってたんじゃないのか?」

「向こうでさ、アミューズメントの内装したらはまっちゃってね。今じゃこの様」

つなぎのポケットに両手を突っ込み、少し猫背で歩く長身は、5年?6年?前と変わらない仕草。

「社長様様か」

「まあねえ」

にっと笑う顔に、ふっと懐かしさが込み上げるが、流されるな。

「喫煙所あったぞ」

くいっと親指で指差して、そいつを置いて行こうとした俺の腕を残念なことに掴まれた。

「まだ怒ってるのか?」

いきなり言われ、

「はあ?!」

と、真顔になっていた大沢の顔を見返した。

「なーんて!もういい加減ほとぼりが冷めたかなーって連絡したのに!つれないなあ、神崎君」

肩をすくめて笑いながら、俺の腕をぱっと離した。

怒るも何も…
ほとぼりも何も…

俺は、眼鏡を直すふりして俯いた。

始まっていたのかさえ怪しいもんだった。
そんな…青臭い時代のことを…。

「もう一度、俺にチャンスをくれるなら、これから先もお前んとこ仕事回すよ。どう?」

「はあ??!!」

そこまで浅ましく仕事探してませんから!
そこまでして仕事とりたくありませんから!

なんて…。
わかってる。

そういうことにしておくのも悪くないかな、なんて。

「ちょっとそこで待ってろよ!すぐ吸ってくる」

適当に壁に凭れて、ため息ついて…。


「仕事のためだからな!」


って、戻ってきたあいつに言ってやるのも悪くない、なんて思っちゃってる俺がいる…。

近頃、色気付いてきた周りの奴らに、触発されたのかもしれない…。



〜つづく?〜

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