*BL Original novel・1*

□籠の鳥
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だいたい!
いい大人が、ぷいって拗ねる?
どう対応すればいいんだよ!

「ねえ、宮元さん!」

無言でぷいっと横を向く。
あーもう!

さっきまで二人が出ているアニメをソファーで並んで見てたんだ。
番組が終わりかけて、僕は普通に声をかけた。

「何か飲みます?これからまだ仕事するならコーヒーでも淹れましょうか?」

そしたら、ぷいっ!と僕から顔を背けた。

「いらないの?」

「…いる」

じゃあなんでそんなにふてくされてるんだ!

「疲れてるなら寝ちゃえばいいのに」

うーんと濃いコーヒーでも淹れようかと、立ち上がったら、肘を掴まれた。

「やっぱいらねえ。ここにいろ」

まったく…。
宮元さんが座るソファーの前の床に、そっと腰を降ろした。
背中で宮元さんの足に寄りかかる。
すると、背中から僕の肩を抱くように腕を回された。

「マリ…」

「はい?」

ぐりぐりと頬擦りしてくるのが痛い。髭があたる。

「お前の声を誰かに聞かれるのが嫌だ…」

また我儘が始まった…。

「今テレビ見ながらそんなこと思ってたんですか?」

髭をざらざらさせながら、宮元さんはこくりと頷いた。

「仕事のなのに?」

「仕事でも何でも、マリの声誰にも聞かせたくねえ…、顔も誰にも見せたくねえ…」

喜んでいいのか、うざがっていいのか…。

「閉じ込めておきてえ…。家から出したくねえ…」

はいはい…。

「だって、宮元さんの今書いてるお芝居、僕出るんでしょ?だったら舞台の上に立っちゃうんだし、顔だって晒しちゃうわけだし。…って、僕が同じことを宮元さんに言ったら怒るでしょ?」

「…言って欲しいかも…」

あら、重症だ。

「僕だって、宮元さんのラブシーンの聞いたりするとヤキモチ焼きたくなる時がありますよ。でも、あれは宮元さんであって宮元さんじゃない、って言い聞かせてます。…だって…」

後ろに首をひねり、宮元さんの耳の上に頭を乗せた。

「僕が好きなのはこの中身ですからね。ヒーローでもギャングでもない、うっとおしいおやじの宮元さんが好きなんですからね」

「すけべおやじで悪かったな…」

そこまでは言ってない。
宮元さんが、ギュウギュウと僕を抱き締めてくる。

「ああ!何日も寂しい思いをさせて悪かったな!マリ!今日はホン書きはもういい!やめた!マリをかまってやる…」

元気でもうるさいし、疲れててもうっとおしい。
どうしょうもない人だ。まったく。
だけど…。

「…俺だけが知っているマリを見せろ」

急に低く囁かれたら、ぞわっと鳥肌が立ってしまう。

「今、目の前で見せているじゃないですか…」

「もっと…全部…全部…」

甘えて圧し掛かってくる重たい体重。
潰されないように、少し身を捩って逃げてみる。
慌てたように伸ばされた手が僕を引き寄せる。

「ふふ…。宮元さぁん…」

膝の上に乗っかって、首に手を回してしがみ付いたら、ギュウッと背中を抱き締められた。


籠の鳥にはなれないけれど。

綺麗な声で鳴けるかもしれない。



(おしまい)


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