*BL Original novel・5*
□サマー・フェスティバル
2ページ/5ページ
俺は興奮するご婦人を落ち着かせながら言った。
「駅前に交番が有ります。すぐそこです。わかりますか?そちらが警備の本部になっていますので、そちらでお待ち頂くか、連絡先を伝えて下さい。今、捜索の依頼を警備の者に伝えますので……」
俺は装着していた無線機に手を伸ばし、事件発生の一報を伝えながら、先輩の到着を待った。
「はあ?犬?放し飼いはダメだろう?」
先輩は呆れた声で言いながら肩をすくめる。少し論点が違う気がする。
「仕方ねえなあ。村雨、お前、ひとっ走り行って、基地ん中探して来い。ここは俺がやるから」
先輩はそう言うと、ピッピッ!と俺よりも鋭く笛を吹いた。
「え?あ、いいんですか?」
「緊急事態なんだから仕方ないだろ?それにお前、知り合いがいるんだろ?そいつ呼び出して入れてもらえ」
「あ、いえ、いることにはいるんですが、今はたぶんいないというか……」
しどろもどろになった俺の背中を、面倒臭そうに先輩が押した。
横断歩道から数十メートル先にある基地の入り口の石と鉄格子で出来た門から中を覗き込む。今は開放され、家族連れなどが楽しげに通り過ぎているが、普段なら一般人を寄せ付けない重厚な構えの門構えだ。
俺は恐る恐る境界線を越えた。そして、物珍しい基地の内部に思わずキョロキョロとしてしまった。そんな時、艦船の並ぶ海の方から一筋の風が吹いてきた。俺は、汗の垂れてきた顎先を手の甲で拭った。そんな俺に、突然声がかけられた。
「誰かお探しですか?」
背後から突然かけられた声に、俺は驚き振り向いた。そこには、白い軍帽を目深に被った、白い制服姿の海上自衛官が立っていた。俺は慌てて、
「すいません!あ、あの、こちらの警備担当の方はいらっしゃいませんか?」
と聞いてみた。すると、その自衛官は、
「はい。私ですが?私が今日の設営の警務の責任者です」
と、頼もしいことを言ってきてくれた。なので、
「あ、私は駅前の交通整理を担当しています県警の者ですが、あ、あの……」
俺が用件を伝えようとすると、警備の責任者は、頭の帽子に手をやり、顔が隠れるようにますます目深に帽子を引き下げながら、フフッと少し笑った。そして、
「フフ……、まさか、制服姿の自衛官は全部同じに見えちゃうとか、言わないですよね?」
「え、あ……」
目の前の自衛官が、顔を隠していた軍帽をゆっくりと横にずらした。俺は、そこに現れた日に焼けた笑顔に心臓を飛び上がらせた。
「ひゅ、日向!!え、なんで……?!」
「ひどいなぁ。俺は、制服姿でも、遠くからでも人混みの中でも、すぐに善だって気が付いたのにな」
日向が、少しすねたように唇を尖らせた。その子供っぽい表情と凛々しい制服姿のギャップが、俺の心臓をキュウッとさせた。なんせ、恋人の顔を見るのは二週間振りなんだ。