*BL Original novel・3*

□君色褪せる事なかれ
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擬人化【栞x本】

弟:史織(しおり)・・・栞
兄:瑪来(めくり)・・・本  
義父:読書家



*  *  * 



僕は、弟の史織(しおり)に手を引かれて、よくこうして家を抜け出し裏の山へとやってくる。
今日も、涙でグチャグチャになった僕の顔を無造作に自分のシャツの袖で拭ってから、無言で僕の手を引いた。

「…うっく、ひ、く…」

まだしゃくり上げる僕を気遣うように振り返り、その足を少し緩めた。

「今泣くくらいなら、あいつの前でも大泣きして暴れてやればいいだろ!」

史織の乱暴な物言いに、身体がビクリと怯えた。

「…ごめん。…そんなことが出来れば、そもそも泣くことになってないよな」

史織が僕の手を握る手に、ギュッと力を込めた。僕もその手を強く握り返す。
月の明かりだけの寂しい細道を二人でとぼとぼと歩いて行く。少し行くと、ひらけた草むらに出る。昼間は遠くの海まで見える場所だから、昔はよく、母親とお弁当を持ってピクニックに来たりもした。今も夜の帳の中で見えないだけで、季節の野花が咲き乱れているはずだ。
史織は僕の手を離して、どかっと草むらの真ん中に座った。僕もその横に膝を丸めて座った。

「瑪来(めくり)、顔上げな」

僕は鼻をすすりながら史織に向かって顔を見せる。

「あー、もう、手で擦っちゃダメだって言ったろ?明日、目の周りが腫れちゃうぞ」

そう言いながら、史織はまた自分のシャツの袖口で、僕の顔を拭ってくれた。

「…ありがと」

僕はやっと涙もおさまってきて、史織にお礼が言えた。そしたら、なぜか史織はぷいっと横を向いた。

「きょ、兄弟なんだから心配すんのは当たり前だろ!」

急に乱暴な言い方で言われ、僕はビックリして、立てていた膝の上に顔を埋めた。

「瑪来!見せてみろよ。あいつに今日はどこまで触られた?」

ドンッ、と横から肩を押されて、僕は草むらの上に仰向けに倒れこんだ。そんな僕を史織は上から覆いかぶさるようにして覗き込んだ。月明かりに史織の端正な顔が浮かび上がる。二人の髪が、サラサラと夜風に揺れた。

「あいつなんて…呼び方したらダメだよ…。お義父さん、て呼ばなくちゃ…」

「…義父さんじゃなきゃ、今頃もう殴ってる」

「史織…」

「あいつは!また今夜も瑪来のこと触りまくって、ジロジロジロジロ眺め回したんだろ!俺は知ってんだ!あいつ、お前を触るとき、自分の指を舐めて唾つけてから触るんだ!気持ち悪ぃ!鳥肌が立つ!」

史織に言われて、僕はさっきまでの、あの恥ずかしい時間を思い出し、身体全体がカアッと熱くなった。

「見せてみろよ!瑪来!身体、開いて見せてみな!俺の瑪来をあいつが汚してたら許さない!」

怒りを隠そうともせず、興奮した史織は、僕の革製の上着を力任せに剥ぎとった。素肌を晒し、僕は風に捲れぬように、自分の身体を自分の両腕で掻き抱いた。
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