*BL Original novel・3*
□わがまマーメイド
1ページ/14ページ
わがまマーメイド..
天井に揺れる水面の光が綺麗だ。
俺は、水の中で目覚め、漂いながら、ぼんやりとそれを眺めていた……。
なんてな!!
部屋の中には、グオーグオーという、どうしょうもなくだらしがねえイビキが響き渡り、もう朝だというのに締め切られた重いカーテンの隙間から差し込む朝日が恋しい。
俺は尾びれでバンバンと内側からガラスを叩いた。外側からは拳でゴンゴンと水槽を叩いてアピールだ。
朝だぞ!
飯だ!
俺に飯!!
博史の奴は、うるさい、とでも言うように、ソファーの上で寝返りを打って俺に背を向ける。
「おい!そこの引き籠りのニート野郎!朝だ!起きろ!カーテンを開けろ!俺に飯持ってこい!」
水槽の中から手を伸ばし、箪笥の上のリモコンを手に取った。
『おはようございます。朝のニュースの時間です』
今日もいつも通りの時間にいつも通りの挨拶をするアナウンサーに「おはよう!」と声をかけた。
水槽の縁に両腕をかけて顎を乗せてテレビを見始める。尾びれが水中で揺れる。
それにしても……。
「おい!博史!ぐうたら寝てんじゃねえよ!お前のその姿、爺ちゃんが見たらなんて言うか。って、どうでもいいから腹減ったぞ!」
ようやくもぞもぞと博史が起き出した。半開きの目とぼさぼさの頭で俺を恨めしそうに見やがる。
「だからゲームなんかやってないで早く寝ろって俺は言ったんだ。どうせ引き籠ってんだから、生活リズムくらい俺に合わせてだなあ……。おい!早くテレビ新しいの買ってくれよ!これ、マジでもうすぐ見られなくなるらしいじゃん。やべえよ!」
「アブ、朝からうるせえ……」
立ち上がり、伸びを一つした博史は、よたよたと部屋から出て行こうとする。
「お、おい!どこ行くんだよ!」
なぜだか慌てる俺に、
「トイレと洗面所と冷蔵庫」
そう言って、面倒くさそうに頭を掻いた。