*学園*

□王子様は御機嫌斜め!
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コンコンとドアをノックされ、へたり込んでいたシャワーの下で立ち上がった。

「呼んだ?」

篠ノ井の声だ。

「そこの変態追っ払って!」

「変態?」

その後、わーー!だ、ぎゃーー!だ、叫びが続いて、ドカって音と、バタンってドアが閉まる音。

またドアがノックされる。

「写真消去しといた。人選間違ったな。とりあえず追い出したから出てこいよ」

冷えた体がガクガク震え出した。

「どした?」

鍵をかけて無かったドアが遠慮なく開かれた。

「寒い…」

瞬間で呆れ顔になった篠ノ井が、シャワーの栓をひねった。

「温まればいいだろ?」

カーテンも締めずにお湯を出すものだから、跳ねかえったお湯が篠ノ井も濡らした。
頭からシャワーを浴びながら、なんか、泣きそうになった。

「だって!だって!タオルもパジャマも無いんだもん!篠ノ井が用意してくれないんもん!そしたら変態がいるんだもん!……篠ノ井のバカぁ…」

篠ノ井が僕に手を伸ばす。
濡れてしまうのに、裸の僕に手を伸ばす。
肌に指先が触れた時は、驚いてびくっとしたけど、なんか…湯気でぼやけてるせいか、篠ノ井が…優しく笑って見える。

「俺は、厳しいぞ?王子様?」

「ま、負けないもん!」

自分で自分がわからない。
なんで篠ノ井に抱きついてんだ?
篠ノ井が頭撫でてくれるのが、めちゃくちゃうれしく思えることが許せない!

「濡れちゃったから、俺も脱いでいい?」

とか、ふざけたことを言って笑ってる篠ノ井の腕から、慌てて逃げ出した。

「お、お前も変態か!!」

「おや?王子様は意外に純情派」

狭いバスの中では逃げ場がない。
濡れて重そうなトレーナーを篠ノ井は脱ぎ捨てた。

「興味はあんま無かったんだけどねえ。意外に可愛いじゃん、兎川…」

可愛いからファンだの、親衛隊だの、いっぱいいるんだろうがーー!!
てか、背中、壁だ。
壁、冷たい。

「ぼ、僕のこと、どう思う?」

うざい?可愛い?何?何?!

「とりあえず…やりてえ…」

体が硬直した。
素っ裸の僕が、服を脱ぎ始めちゃってる変態の目の前に晒されてる…。

「や、やだ…よ…」

迫ってくる篠ノ井の顔が怖いよ。
顔の両側に突かれた手から逃げ場がないよ。

「顔だけは可愛いな、お前…」

とか耳元で囁かれて、涙が出そうだ。

「やだあ……」

足の力が抜けた。
また頭の上からシャワーを浴びる羽目に会う。

「駄目。んな可愛い目してもダメ。俺はしたくなったらする主義だから」

さすがに、ぶわっと涙が出た。

「できないよお!できないったらできない!だって、だって、そんなの、そんなの…」

篠ノ井も怖くなった。
だから、逃げずに思い切り抱き付いた。

「あーー…」

って、ボケてる篠ノ井の声が聞こえる。

「タオル用意してねえや。取りに行ったら部屋濡れるな」

「そ、そんなの。篠ノ井が拭けばいい!」

腰を滑る手の感触にまだ涙が出る。

「…俺が同室でオーケーか?」

頷いてみせ、油断した篠ノ井の手から逃げ出した。

僕の貞操!
みんなごめんね!
この先、こんな同室者のせいで、どうなるかわかんないよ!




髪の毛をタオルで拭かれながら、冷えてしまったココアをすすった。

「こいよ」

とか、ベッドを叩かれ、ぶッと吹き出した。

「王子様には躾が必要だな」

ま、負けるか!
いつか平伏させてやる!




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