*学園*

□小動物の飼い方
2ページ/4ページ

   *


「ねえ…。隣の部屋がうるさいよお…」

壁にくっついてるベッドに寝転んだら、薄い壁を通して、どたんばたん響いてくる。

「じゃあ、こっちおいで」っていつもなら言ってくれるのに。

「ベッド代る?」

って、今日は言われた。

「我慢する…」

って、布団を頭から被った。
そしたら、ふうって、むーちゃんのため息が聞こえた。

足りない頭で考えた。

もしかしたら…いい加減ウザくなってきたのかな…。
格好良くて、頭が良くて、スポーツ万能なむーちゃんは、人気者だ。
また今年も僕の世話をしなくちゃなんないのかって、嫌気がさしてきちゃったとか…。
ごそごそ寝返りを繰り返してたら、

「眠れない?」

また心配かけた。
布団から頭だけ出して、

「そっち行っていい?」

って聞いたら、

「駄目」

って、今度ははっきり断られた。
なんだよ!
むーちゃん、急にいじわるになった!
しばらく布団の中でじーっとしてみる。
また、ふう、なんてため息が聞こえて、なんか泣きそうになったけど、我慢した。
壁の向こうの隣の部屋も静かになった。
いつも朝練があるから早寝のむーちゃんももう寝ちゃったかな?
頭から布団を被っちゃってるむーちゃんの様子はわからない。
そーっと布団を抜け出して、そーっとそーっとむーちゃんの布団に潜り込んだ。

布団の中で、むーちゃんとばちっと目が合った。

「ゆ、夕!一人で寝ろって言っただろ!」

怒られた…。
こっちの布団の中はこんなにあったかいのに…。
すごすごと戻ろうとしたら、怒ったはずのむーちゃんが僕の腕を掴んで引きとめた。

「ぐ、ぐえ!苦しいよ…むー…」

布団の中で、ぎゅうっと体が抱き締められた。

「今…俺が何してたか見ただろ…」

「見てないよ…」

「嘘だ。見た」

何を怒ってるんだろう?
何も見てないよ!
というか、怒ってるなら離してほしい!怖いから!
もがいてもむーちゃんが強く締め付けてくる。

「離してよ!ちゃんと一人で寝るから!怒らないでよ!」

少し腕の力が弱まった。

「お前はほんとに…」

えーえー!ほんとにおバカですよ!甘ったれですよ!

「すぐ泣く…」

だって…むーちゃんが…。
むーちゃんの体の上に乗っかって、その首にしがみ付いた。

「ねえ、夕…。じゃあ…手伝って?」

あったかい手の平が頭を撫でた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ