*学園*

□お菓子と萌え
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「夕ちゃん、向田は?」

夕は黒くて大きな目をくりくりっとさせた。
この小動物が保護者なしでうろつくのは迷子以外では珍しい。
嬉しそうにポテチを頬張りながら、

「むーちゃんは先輩の部屋に行ったよ。えっと…マッサージしてもらうんだって」

残り少なくなってきたポテチを王子様が小動物から奪いながら言う。

「やらしー!マッサージだって!変態なんじゃないの?!」

「違うもん?!」

こらこら、いじめないいじめない。

「スポーツマッサージじゃないかな?」

助け船を出すと、夕はこくこくと頷いた。

「最近、しょっちゅう先輩に呼び出されちゃうんだよ、むーちゃん。さびしいな…」

ほうほう?
それは興味深い話ですな!
向田はスポーツ万能、爽やか好青年だ。
かなりモテる。
コブつきなので、直接アピールは滅多に来ないみたいだが。
向田に興味を示している同じ陸上部の先輩といいますと…ははあん。あの人ですね。本気になられるとややこしいことになりそうで、いやあ、面白そうだ。

「持田君、ちょっといいかな?」

頭の中のメモ帳に新たな事件を書き込んでいると、涼しげな声をかけられた。

「副会長!どうしました?!」

麗しの流し目、3年里見十以さんだ!
普通ならこんな平民に声をかけるような方ではないが、ふふふふふ……。
ふはははははは!!!
今学期から僕は平民じゃないのだ!!
趣味の情報収集も、談話室だけでは限界だ。
もっと内側に、深く!入り込まなくてはいい情報は得られない!
と、言うわけで、僕は…前期生徒会の、なななんと!書記になってしまったのだー!

「じゃあ、御馳走様!」
「…ありがと」
「コーヒー遅い!!」

と、お菓子の切れ目が縁の切れ目のように、去って行ってしまった可愛い奴らの座っていた椅子の一つを埃を払ってすすめた。

「ど、どうぞ。お菓子は秘蔵のポッキーになりますが…」

何でも相談してください!
会長のことですね!
会長とまた喧嘩しましたね!
さあ、聞かせてくださいでっす!!

そんな僕の前に、どさどさどさ!っとファイルの山が積み重ねられた。

「これ、去年の資料。全部、目を通しておいてくれ。じゃあ…」

つ、つれないよお!

立ち去る優雅な後ろ姿に、そっと溜息をついた。


それでもめげずに、萌え収集していくぞ!

この学園の書記として、あらゆる萌えを脳内に記録させて頂きまっす!

「…あの…持田先輩…」

ファイルの束を持ち上げて部屋に戻ろうと立ち上がったところに、迷える子羊ちゃんが現れた。

「これ!読んでください!」

なんて!ファイルの一番上に真っ白い封筒を一通のっけられた。

ふ、ふ、ふお?!!

あ、ちょっと待ってよ!君!!

……まさか、僕自身のコイバナも記憶に残るというのでしょか……?



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