*学園*

□小動物のあくび
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「どこ行ってたの?」

夕に、夜中一人で部屋を抜け出したことがばれているとは思いもしなかったから、少し言いよどんでしまった。

「お腹すいたー。ご飯まだかなあー」

夕はベッドの上に移動して、ごろんっと転がった。

「こら、寝ちゃうと夕ご飯食べられなくなるよ」

背中に少し冷や汗をかいてるのがばれないように、さりげなく言ったら、夕がごろりと背中を向けた。

それで、覚悟を決めた。

「あのね、夜呼び出されてさ、話があるってね」

くるりと夕がこっちを向いた。
真ん丸の大きな目をぱちくりさせている。

「告白されたんだけど、きちんと断った。……おいで、夕」

夕がベッドから降りて来て、俺の膝の上に乗っかった。
そのちっちゃな体を背中から抱き締めた。

「…俺には…夕だけだからさ」

夕が何か言いたげに後ろを向こうとするけど、ギュウッと抱き締めて、はあ、と溜息を付いた。

「あのね、いい物送ってもらったんだけど…」

マットレスの隙間に差し込んでいたアルバムを引き抜いた。

「一緒に見よう?」

夕の顔の前で、アルバムの最初のページを開いて見せた。

「わ。子供の頃のむーちゃんだ」

「そ。それと、ちっちゃい頃の夕」

幼稚園…小学校…いっつも横には夕がいた。
そんな写真を数枚送ってもらった。

「むーちゃん、かわいかったんだねー」

とか言って、夕がアルバムをめくる。

「…俺…、我慢できなくなったら、これ見て落ち着かせようと思って…」

ぐりぐりと夕の首筋あたりに頭を擦り付けた。

「むーちゃんくすぐったいってば!」

「ああ、もう!こんなに大きく成長しちゃって!」

中身は変わらないくせに、こんなに可愛く成長しちゃって、もう!

「むーちゃんに言われたくない!ほら!こんくらいの時は身長そんなに差がなかったのに!」

むきになってアルバムの中の二人を指差す夕が可愛い。

おおっと。
また夕が大あくびした。

飯と風呂と明日の支度と…
とりあえずやること済まさせよう。

あ、でも…。
このまま抱っこして寝かしつけちゃってもいいかもね…。


(おしまい)



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