*学園*

□王子様も悪くない
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体育館の裏に、兎川と先輩たちの姿を見つけた。
って、柄が悪い先輩ってなんだよ…。
兎川は俺に背中を向けているから様子はよくわからないが、その正面に立つ連中は、王子様親衛隊の連中じゃねえか。まあ、部屋の前にたむろされたりしてるんで、顔は覚えてる。

「だから僕はやらないって言ってるだろ!」

兎川が両手で拳を握りながら、なんか怒鳴りつけてる。ぎゃんぎゃんうるさいやつ。

「王子様がいなくちゃ始まらないじゃないですか!」
「お願いしますよ!」

なーにを揉めてるのかねえ。

「よお」

声をかけると、親衛隊の連中が一斉に俺の方を見て、兎川もくるりと振り返った。
俺の顔を見るなり、兎川の顔面が真っ赤になった。
なんだっちゅうの。

「し、篠ノ井!」

「あれー?王子様、俺の試合、応援しに来てくれないのー?」

ふんっ!と顔を背けるのが王子様らしいな。

「お前は…王子と同室の…。お前からも頼んでくれよ!次の決勝戦、ぜひうちのクラスの応援団に入ってくれって」

がたいのいい先輩方が手を合わせて拝んでくる。

「はあ?」

「親衛隊の隊長が試合に出てるんだよー。ぜってー王子の応援があれば張り切ると思うんだ。なあ」

うんうん頷きあってるし。

「なんで僕がそんなことしなくちゃいけないんだよ!」

確かに…。
がんばってねー、なんて、旗振って笑顔を振りまく王子様なんて、想像もつかないが。

「あー、先輩方…。申し訳ねえんだけど、王子様、俺の応援するんだわ。俺もこの後決勝なんで」

「え、なんで…」

文句を言いだしそうな兎川の耳元に口を寄せた。

「それとも変態親衛隊長の応援に行きたいのか?」

「なっ!」

「というわけで先輩方、王子様貰って行くねー」

兎川の肩に腕を回して、強面達に背中を向けた。

「ま、まさか!篠ノ井!王子に手を出しちゃいないだろうな!」

そんな悲鳴のような声が上がるが。

「さあて、どうですかねー」

と、肩をすくめてみせた。
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