*学園*

□王子様も悪くない
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「決勝まで行ったんだ」

兎川が俺の腕の中、つか、抱き締めちゃいないが、肩先で顔を上げた。

「優勝したら、ご褒美は王子様ってとこかな」

「ふざけんな!」

ぱぱっと俺の腕から逃げ出した兎川はまたもや真っ赤になってる。
こいつ、ほんと純情。

「まあ、俺、お前みたいな我儘な奴に興味はねえから、どうでもいいんだけど」

何て言ってやると、唇を尖らせたまま、ちらりと俺を見上げてきた。
思わずドキッとなんか…俺らしくない!
まあ、だって、こいつ、顔だけは可愛いからな。
人形みたいな顔して、人形みたいにじっとしてりゃあいいのに。
従順な大人しい系がお好きな俺が…。
少し…まあ、少し、な。

「…なあ…」

柔らかそうな茶色い髪に手を伸ばした。
兎川が一瞬ビク付いて身を引く。
そうとう怖がられてるな、俺。

「篠ノ井は、…どうしてそんな冗談ばかり言うんだ?」

「冗談?」

「なんか…なんか、篠ノ井ってば…いっつもやらしい!」

必死な言い草に、ぷっと吹き出した。

「普通じゃねえの?俺なんか全然ふっつうだと思うけどねえ。あー…童貞王子様にはいっつも刺激が強い?」

なんか…俺…こいつをからかうのが楽しくてたまらねえ。
なんだろな…。

ピーーッと体育館から笛の音が聞こえた。

「篠ノ井!試合!」

「やべ。始まっちゃったか。…さあ、お手をどうぞ、王子様」

「ふざけるなあ!」




生徒会長は雄叫びを上げ、がたいのいい隊長は王子様にウインクをおくり、黄色い声援が大反響を起してる。
敵はなかなか手ごわい。


試合中にやたらめったらたかれるフラッシュは、俺に向けたものじゃないけれど。

シュートを決めた俺のガッツポーズに、兎川が可愛く笑った。


まあ、王子様も悪くない。



(おしまい)


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