*学園*

□平穏な日々
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「い、いや、俺、そういうの興味がないから…」

ここでって、こんな全寮制の男子校で恋人なんか作れるか!
たった今までもそういうのは男らしくないだろう!って散々愚痴っていたわけで…。

「自分が出来ねえことで人を責めるのは男らしくないと思うがねえ」

ぐぐ。
男らしくない、という言葉に引っ掛かった。

「か、賭けって、何をどうするんですか?!」

「んー…」

談話室を出て行く副会長を気にして、ちらりと振り返り、さして考えた風でもなく、適当な感じで…。

「恋人が出来たら、来期生徒会に入れてやる。出来ない限り、生徒会の下僕だ。以上。…十以!待ってよお!」

何かすっごいこと言い捨ててた感じで、生徒会長が扉の外にダッシュで消えて行った。
なんか、冷や汗が背中に流れてるんですが。
談話室の中は、もう俺に興味をなくして、各々の娯楽に戻り始めた。

「ど、ど、どうしよう。鹿淵…」

鹿淵は頭を振る。
ぽんっと、俺の肩に手が置かれた。洛山だ。

「奈良くん、こちらへ」

腕を引っ張られて、案内されたのは、お菓子ののった、生徒会書記さんのテーブルだ。
きらびやかな役員たちの中では、浮いてしまうような地味めな先輩。
地味な先輩、地味な同級生、普通…だと思う俺とで、席につく。

「ええと、奈良くん、でいいんだよね?僕は持田といいます。生徒会の書記です」

「は、はい」

「ぷっ。今日から君はうちの下僕なんだね」

「え…」

面白そうに、この人の良さそうな先輩は笑うけど、笑い事じゃない!

「まあ、会長は副会長のことになるとおかしくなるから。普段はいい人だよ、うん」

「はあ…」

すっと目の前に差し出されたお菓子の皿から、クッキーを一枚頂戴した。

「困っている君にひと肌脱いで上げようじゃないか!君の恋人探し、微力ながら僕が力になって上げよう!!」

クッキーが喉に詰まった。

「え、げ、げほ、げほげほ…」

「持田先輩は本当に頼りになりますね!」

「ええと…今フリーなのは…」

胸ポケットから厚ぼったい手帳を取り出し、捲りながら持田先輩がキラキラした目をしてる。

「君は…、かっこいい先輩と可愛い先輩、どっちが好み?」

目の前がくらくらする…。

「普通が……、ああ、洛山みたいので…」

あ、そうか。

「頼む!洛山!俺と付き合ってることにしよう!」

持田先輩がパン!と手を叩いた!

「それいい!いいかもしんない!ね!淑架ちゃん、そうしなさい!大丈夫だよ、こいつ、真面目そう!」

「え…」

ちらっちらっと、洛山が俺と持田先輩を見比べた。別に、どっちが上とも言い難いが…。

「頼む!俺に平穏な日々を!」

洛山に頭を下げて頼み込む。
これであの俺様会長を見返せる!

あれ?
賭けに勝つとなんだったっけ?

「平穏…ねえ…」

持田先輩のつぶやきが、少し気になった。




(つづく)


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