*学園*

□シロツメクサの君
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校舎の近くでその子を見失った。
たまたま近くを通りかかった図体のでかい一年に声をかけた。

「あ、君。ここに、えー、すごく綺麗な子が通りかからなかったかい?」

仏頂面のその一年は、「さあ?知りません」と愛想なく通りすぎて行った。
おかしいな。
そんなに遠くには行っていないはず。

昇降口の陰に、人影を見付けた。
居た?!

「あ、君…」

掴んだ腕の主が怪訝そうな顔で僕を見上げた。

「ああ!ごめん!人違いだ!」

ぼさぼさの髪の、黒縁眼鏡の地味ーな子だ。おそらく一年。
ああ、俺の探し求める子とは180度違う子だ。

「洛山!鹿淵が探してたぞ!」

同じく一年だろう、あ、なんか見覚えのある子が地味な子に声をかけた。

「あ、君は生徒会の下僕くん…」

凛々しい眉が男前な一年が、その眉をひそめた。

「生徒会の人ですよね?!お、俺!恋人できたって会長に伝えておいて下さい!」

おお?

「先輩…、腕痛い…」

地味な子が、小さな声を上げた。

「あ、ごめん!」

慌てて掴んでいた腕を離した。
あれ…。
なんで心臓が高鳴り始めたんだろう…。
思わず、キョロキョロと周りを見渡した。
あの子はいない…。

「あー、まさか、君たち、付き合ってるの?」

乱れた髪を掻き上げつつ、胸の高鳴りを隠して、微笑んだ。
かっこいい先輩の余裕を見せつけなければ。

「あー、まあ、そういうことです」

地味な子が、しかめっ面の子の後ろに隠れた。

「とても、お似合いだね」

とか言ってあげながらも、なぜだか、胸が痛くなった。
なんだこれは…。

「あ、あの…、ここに…、サラサラの髪の好けるように白い肌の…ツンとすました…綺麗な子が通りかからなかったか?」

きっと、あの子を想うあまりの苦しさなんだ。

「は?!さ、さあ?先輩、夢でも見てたんじゃないですか?!」

先輩に対して、なんて言い様…。
と、腹が立つ前に、また心臓が跳ねあがった。
ぼさぼさの髪の牛乳瓶眼鏡の子と目が合って、心臓がドッキンて鳴ったんだ。

な、なぜだ?!
僕の探し求めている麗しのあの子はいないのに。
目の前のぼさぼさな子を見て胸が苦しくなるのは、なんでなんだ?!

あ…。
風邪でも引いたのかな…。

「昼飯食いっぱぐれる!行くぞ、洛山!」

手を引かれ、引っ張られていく子が、一瞬、僕を見て笑った気がした。
眼鏡の下の目が、微かに細められた気がした。

ああ!
どうなってんだ!!
頭が混乱する!!

麗しのあの子はいずこへ?!

なぜか、立ち去る一年カップルを、切ない想いで見送った。


(つづく)



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次回は『皐月祭』でオールキャラ出演予定^^
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