*学園*
□皐月祭
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(書記:持田 視点)
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「大変な事態になった…」
会長が珍しく神妙な顔つきをしている。
生徒会執行室の大きな会長執務机に両肘を付き、僕を立たせたまま睨みつける。
「イベント担当者としては、責任を取ってもらわねばならないな」
凄味のある視線に、背筋に冷や汗が流れる。
「受け付け締め切りは今夜消灯までだ。何とかしろ。集められない時は…」
ニヤリと会長が意地の悪い笑みを浮かべた。
「お前に出てもらうことになるかな。しかも…恥ずかしい姿で…」
「ひっ!は、恥ずかしい姿?!」
副会長が会長の横で肩をすくめてる。
「何だよ、恥ずかしい格好って」
「持田は創造力が豊かだ。それだけ言えば伝わるだろう」
ど、どんな姿を人前に晒されるのでしょう…。
あんな…こんな…。
ひーーーーっ!
「あ、そうだ。副会長が出れば…」
「駄目だ!」
会長が、ダン!と机を叩いて立ち上がった。
こほん、と副会長が咳払いをした。
「それは俺が許さない。いいな、持田!今日中に何としても『皐月祭の王子様』候補を見付けてくるんだ!行け!!」
追い出されるように生徒会執行室を後にした。
額に浮かんだ冷や汗をやっと拭うことができた。
しかし、まあ…。
何だって今年はこんなことになっちゃってんだ?
毎年恒例の生徒会が企画する五月のイベント『皐月祭』。
生徒会書記らしく、事務的に言わしてもらえば、来年度の学園の生徒募集のポスターモデルを投票で選ぶイベント。
個人的な趣味で言わせてもらえば、学園のカワイ子ちゃんを決めるイベント。ここ大事。イケメン攻めじゃいけなんだよ。受け顔のカワイ子ちゃんじゃなきゃいけないんだ。(これは…学園側の意向による…理事長あたりの趣味なんじゃないかとの噂もある…)
そんで!それでだ!
毎年少なからず立候補者が集まり、そこから投票で選ばれるのだけど…、
今年は締めきり当日の今日になっても、まだ一人の立候補者も居ないという困った事態になってしまっているんだ!
イベント担当の僕としては、冷や汗ものの事態何だ!
何がいけないんだ?
『皐月祭の王子様』に選ばれたら、シロツメクサの王冠を貰うんだ。素敵じゃないか。(それを編むのも僕の仕事だけど…)
その王冠を日付が変わるまでに手渡した相手と、その後永遠の愛で結ばれる…というこれまた素敵な伝説付きなんだ。(これは過去の生徒会の仕込みネタだったらしい…と生徒会極秘ファイルに書いてあった…)
まあ…去年は大変だったな。
兎川が王子様に選ばれて、(兎川が今「王子様」呼ばわりされてる理由はそれだ)その王冠の奪い合いが行われた。
特定の、シロツメクサの王冠を渡す相手が居なかったらしい王子様。
その王冠を最後に手にしたものが王子様を自分のものにできるとか、伝説が歪曲し、それはそれは激しい争奪戦が…。
あ……。
今わかった。
そのせいで今年は候補者が居ないんだーーー!!
相手がいるカワイ子ちゃんだったら、そのお相手がそんな目に会わせたくないから出させないだろうし、興味本位で命の危険(貞操の危険?)を受け入れようという変わった子もいないのだろう?!
あああ…。
このままだと、僕が恥ずかしい格好で、いけにえの羊ちゃんにされちゃうよお!