*学園*
□おあずけ
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(浮気系?:小路類 視点)
「ねえ、まだ終わらないのー?」
せっかくの宿直番の夜だっていうのに、先生はノートパソコンに向かいっぱなしで相手をしてくれない。
「ねえ」
デスクに向かってる先生の背中から、甘えて両腕を回して、肩に顎をのせてみた。
「邪魔するなら部屋に戻れ」
平気でそんな冷たいことを言い放つ先生に…むっとするから言い返す。
「もう枯れちゃってるの?やりたい盛りの若者の相手には不足だねえ」
「お前は…」
先生が少し振り向いて、肩から覗く、俺に軽くキスをした。
「たまには我慢しろ」
ニッと笑われて、恥ずかしくなって先生から離れた。
大人の余裕みたいな顔で、俺に向かって、ふっと鼻で笑った。
「な、なんだよ!じらすなよ!」
頬を膨らます俺からパソコンの方に視線を戻してしまい、またカタカタとキーボードを叩き始める。
「もういい!帰って寝る!」
ふてくされたままドアに向かう俺を、
「類」
とこちらを見ないまま呼び止めた。
「何?」
「寂しいからって浮気すんなよ」
バカ!
だったらかまえっての!!
期待して持て余してしまった体で、飛び出した宿直室のドアの外で、溜息をついた。
いっそ襲って仕事の邪魔してやればよかったかな、とか思うけど…嫌われたくないとか、俺はそんなに色情魔じゃないとか、なんていうか、さ。
健気ぶる自分がおかしいや…。
ま!
やれる夜にやらない(やれない)なんて、じじいか!バカ!理解不能!
*
期末テストの見直しというつまらない授業に、さらに「今から呼ぶものは放課後補習」という、いやらしい言動に、チャイムが鳴る前に教室はざわめいていた。
でも、俺、黙ってた。
チャイムが鳴り終わって、先生が教室のドアから出るまでじっとしてた。
見計らって猛ダッシュで廊下に出たけど。
「原先生!俺も…補習受けていいですか?」
学校では、さらにつれない態度のこの先生は、にっこり営業スマイルを俺に投げかけた。
「小路は今回良く頑張ったな。補習は必要ないだろう」
髪なんか掻き上げて、少しキザっぽいポーズをとる。
完全に!営業スタイル!
ちょっと…傷つくな…。
「でも…」
「原先生!俺もわからないところあるんで放課後参加していいですか?!」
取り巻きどもが押しかけてきた。
遠慮がちな俺は輪の外に弾き飛ばされる。
なんだあれ?!
チャラチャラしちゃってさ。
胸のボタン外し過ぎじゃないか?
金のネックレスとか今時はやらないだろ?
それを言うなら、茶髪もピアスもはやらない!
ふん!
エロ教師!
面白くないので立ち去った。
でも。
放課後、教科書ノートを抱え、補習の行われる教室のドアに手をかける俺がいたり…。
先にガラス窓から中の様子を窺おうとしたら、後ろから声を掛けられた。
「関係者以外は立ち入り禁止だぞ」
「あ…」
ふざけたことを言ってくるのはエロ教師だ。
「暇だから勉強とかしてやろうかと…」
先生の後から教室に入ろうとし俺を、立ち止まった先生がチラリと振り返った。
「暇なら帰って寝てろ」
鼻の先で…ドアがピシャリと閉められた。
な、な、なんだよ!!
確かに学校ではあんま、っていうか、ほとんどいちゃついたことはないけど、これはない!
なんか怒ってるのか?!
……昨日の夜、邪魔したから?
じじい呼ばわりしたからか?(口に出してないぞ)
なんだよ……。