*学園*

□その男前ペットにつき
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第一章

『その会長に捕えられ』




バス停のある県道脇の、鬱蒼とした林の中に、長い石畳の坂道が続いていた。
五分ほど歩くと、鉄製の豪華な細工が施された巨大な門が現れた。
その門の石造りの門柱には『讃絃堂学園』と古めかしい真鍮で造られた表札が掲げられている。


俺は乱れた息を整えながら、その重厚な門を唖然と見上げた。

一日数本しかない路線バスには自分しか乗っていなかった。
他の新入生や在校生がいないことに不安を感じていたが、もしかして、バスなどを使ってここに来るのは自分だけなのかもしれない。他の生徒は全て、お抱え運転手付きのリムジンなどで運ばれて来ているのかも…などと、そんな光景を思い浮かべ、漫画みたいだ、とくすりと笑った。
そんなことを思わせる、巨大な門扉に圧倒されてしまった。




高校入学を前に両親を亡くし、親類の家で世話になることを拒み、働きながら通える夜学の高校へ進学先の変更を考えていた。
そんな俺の元に、期限の迫った奨学生テストの案内が突然送られてきた。



神司礼斗様

全寮制『讃絃堂学園』高等学校




奨学生に選ばれれば、寮での生活費や学費全てが支給、免除される。
その上、支度金、と称し、かなりの金額が提示されていた。
……両親の残した借金を全額賄えるほどの……。
俺は飛びついた。
テスト会場だと指定された都内の高級ホテルの一室で、なぜか一人きりで受けたテストの結果は『合格』だった。
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