企画ss
□こっち向いてごらん
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威風を誇る堅固な城は、昼間の喧騒が嘘の様に、静寂に包まれている。
いや…、夜の帳が降りると、この城の主の寝室からは、微かに甘い睦言が漏れ聞こえてくるのだ…。
「……おらん」
いつもならば遠慮がちながらも甘える声が返事を返すのだが、今夜は衣擦れの音しか聞こえない。
「どうしたんだい?こっちを向いてごらん」
褥の上で、信長のお気に入りの小姓である蘭丸は、拗ねたように横顔を見せた。
その細身の体を組み敷いている信長は、目を細め、愛しくてたまらないというように蘭丸に声をかけた。だけど、蘭丸の態度に少し戸惑いを見せる。
「おらん?」
「信長様なんて…もう知りません…」
何か蘭丸の気に触るようなことをしてしまっただろうか?自分の胸に聞いてみたくても、思い当たる節は多過ぎて、目星がつかない。
「そんな顔も可愛いよ、おらん」
信長はゆっくりと蘭丸の白く匂い立つ首筋へと唇を降ろした。
「あ…っ。だ、誰と比べて可愛いとおっしゃられているのかわかりません」
寝着の胸元に滑り込もうとする信長の手を抑えながら蘭丸が言う。
蘭丸がたまにみせる小さな嫉妬も、信長にとっては刺激剤だ。
「わかっているだろう…。お前だけだよ、おらん」
信長は、蘭丸の手を容易く外し、胸元から素肌へと手を差し入れた。陶器の様に滑らかで、しっとりと吸いついてくるかのような魅惑的な素肌。何もかもを忘れさせて、溺れさせてくれる身体だ。
「信長様は…、いつも意地悪です…」
意地悪…などという可愛い言葉では、昼間の信長は表現されないであろう。云うなれば、恐怖、畏怖。しかし、この閨に居る信長は、確かに少しばかり上げた口の端などが、いたずらを隠す子供の表情の様で、「意地悪」そうだ。
「おらん…」
肌蹴た寝着の裾から、蘭丸の白い太股が露わになると、信長の堪えも薄らいだ。その内股に手を掛けると、自身の身体を割り込ませる。これ以上の抵抗も無駄だと、蘭丸は信長の首に白魚の様な手を絡ませた。
身体の中に送り込まれる逞しい律動に、蘭丸は必死になって信長の体に縋る。声を堪える為ではなく、迎えてしまいそうな絶頂を抑え込むために唇を噛み締めている。主より、先に達くことは恥だという思いがある。
「おらん、そんなに噛むと…唇が紅くなってしまうよ…」
蘭丸の唇をこんなにも魅惑的にしたのは自分だという自負を憚らない信長だ。
「おらん…、いつものように鳴いておくれ。その愛らしい声で…」
身体の奥まで埋め込まれた怒張がさらに奥を突いてくる。快感の壺を激しく擦られ、蘭丸はとうとう唇を開いた。吐息より先に甘い嬌声が漏れる。
「の、信長…様っ、あっ、ああ…んっ」
「おらん…、くっ…、こ、これでもまだ俺を疑うのか?」
腰の動きを速め、蘭丸を追い詰めながら自身の限界も近くなる。
「い、いえっ!信じております!信長様っ!信長様…、あ、愛しておりますっ!あ、ああっ!」
「お、おらん!」
「の、信長さまっ!」
蘭丸の愛の言葉に、堪らずに信長は欲望を弾けさせた。身体の中に注ぎ込まれた信長の熱を感じながら、蘭丸も互いの腹の間で揺れていたそこから、熱い想いを解き放った…。
その瞬間…。
「あ!その顔、イイね!おらん、その顔のままこっちを向いて」
「あ…」
まだ身体を繋いだままの状態、信長は寝具の脇へと腕を伸ばす。愛用の端末装置を手に取ると、蘭丸の顔へと近付けた。
「今の表情、もう一度みせてごらん」
今の…、とは、絶頂を迎えた瞬間のことを指すのだろうか?無茶な要求に、蘭丸は信長の肩に縋り、顔を隠した。
「恥ずかしいです…」
決して無理なことを言うな、とは言わない。だが、信長も自分の無理難題に気が付いたらしい。
「ならば、もう一度可愛がらなくてはいけないな」
「はい…。信長様…」
再び力を取り戻した信長からの圧迫感に、蘭丸は甘えるようにその肩先を唇で吸い立てた。
三度程の目眩く快楽の絶頂を繰り返し、ぐったりとした蘭丸を胸に抱き締めながら、信長は考え込んでいた。
行為に夢中になってしまい、最高に可愛い蘭丸の表情が自分の端末に収められないのだ。憂うべき問題だ。
蘭丸が腕の中で微かに寝息を立て始めた。
事後の疲労の色濃い蘭丸の寝顔は、何度見ても見飽きることはない。愛しくて堪らない。
とりあえずこの顔も端末に収める。
だが、この顔ばかり収集していても物足りないのだ。
信長は秘蔵の蘭丸コレクションを眺めながら、……ふとひらめいた。
その瞬間を捉えられないのならば、事の次第を全て写しておけばよかったのだ。動画という機能ならば、蘭丸の可愛らしい息や声まで残しておけるではないか!
そうだな…。
明日の晩は、明智あたりに襖の向こうから隠し撮りするように命じよう。
最愛の小姓と過ごす信長様は、今夜も満足気に眠りについた。
(おしまい)
*撮影担当明智さん後日談w
隠し撮り翌日…。動画を見た信長様、激怒!
信長「なんじゃこりゃあああ!俺の尻しか映ってないじゃないかああ!」
明智(汗、汗)「あ、あの位置からですと、これしか撮れなくて…」(体勢くらい考慮してくれたっていいじゃないですか…。自分勝手なんだから…)
そして…。
「そんなに俺の尻が好きならば…」と、明智の待ち受けは信長様の尻画像にさせられるのであった…。変更は裏切りとみなす!みたいなw信長様は悪気がないといいwタダの嫌がらせなんだけどw
まあ、明智もこっそり仕返ししちゃうからいいかw