be with them

□四人の高校生活A
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「あぶねぇぞ、睦美」
「おぉ、ありがとう。」

「太陽ーストレッチしよーぜ」
「いいよー」

「睦美、あれ取って」
「はいよ、」

「なぁ太陽、この問題解けた?」
「解いた、教えるか?」





「おう、達夫!睦美どこいるか知んね?」


「……お前らマジで夫婦みてぇだな。」

「は?どこがだよ」

「……なぁ、のぶちゃん。」
「そういわれればそうだな。」

教室で喋っていた二人は突然の来訪に顔を上げて答えた。
確かに、小学校から同じだという二人は阿吽の呼吸よろしくセットで見るのが当たり前になっている。
しかし、当人らにその自覚は無い。


「まぁでも、気を付けた方がいいぞ、最近物騒だからな。」

「……なんだよ、俺はもう騙されねぇぞ」
「違うって、このクラスの一部の女子に言える事なんだがな……お前ら狙われてる」
「は!!??」

神妙な面持ちで太陽に顔を寄せた達夫は意味ありげな目で女子を見たかと思えば更に太陽の不安を煽るように声のトーンを落とした。

「あの廊下側にいる女子は特に危険だ。」
「な、なんで!!!!」
「太陽、心当たりは無いのか?」

志信にまで煽られて、太陽は遂に動揺を隠しきれなくなった。
廊下側の女生徒を凝視したままブルブル震えている。
太陽の脳裏には先日、睦美とじゃれあっているときに女生徒が鼻息を荒くしながらガン見してきたことが過っていた。


「……この前女子がトミヒカって言いながら俺たちの方見てた…!!!!」

「それは『富岡太陽・檜川睦美失脚作戦』の暗号だな。」
「そいつらはデルタフォースだ。」
「俺女子に恨まれることしてない!!!!」


「(ここまでくると可哀想だな)」
「(ストッパーいないと不憫だな)」


本来のストッパーである志信が仕事を放棄したことで太陽は今にも死にそうな顔つきで二人に助けを求める。
もちろんこの二人、女子が睦美と太陽に注目していることは知っていたがトミヒカという謎の暗号の意味なんて知らない。
志信に至っては頭に何故か浮かんできたデルタフォースという言葉が言いたかったがためである。


「ちょ、睦美はどこなんだよ、」

「睦美はトイレ。」

「あいつこそ大丈夫か?睦美、女子に興味ないから知らないと思うぞ…!!!!」

「落ち着けサニー、お前今とんでもないこと言ったぞ。」


一部の女生徒が猫よりも素晴らしい耳を働かせて太陽の失言を聞き取った。
その後全ての用語の意味を知った達夫はその狂暴性と生命力の高さから腐女子のことを『黒の腐ァランクス』と呼ぶのだが、これはあるゲームをやる者にしか分からないネタだったためすぐに封印された。


そこにトイレから戻ってきた睦美はガタガタ震えながら女生徒とすれ違った教室の出入口を指差した。



「いい、い今女子がヒカトミキタコレとかいいながら出てったぞ…!!!!」
「「!!!!」」
「……トミヒカ、ヒカトミって、睦美と太陽のゲイカッ―‥」
「志信ゥウウウ!!!!それ以上を言うんじゃねぇぞオラァァ!!!!????」
「ゥガフッ!」
「むっちゃああん!!!!のぶちゃんが窒息してるからぁぁぁ!!!!喉仏押さえるのやめたげてぇぇ!!!!」
「……そういや、睦美ってゲイ恐怖症だったよな。」

後に志信と睦美は語るが、決して間違ってはいけないのは彼らのベクトルは違うということだ。

『二度とあんな思いはしたくない』



余談ではあるが、『黒の腐ァランクス』の元ネタを知っていた太陽は達夫の言葉に訂正を加えて『女子は腐ァランクス』と改めた。
 

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