あいらぶゆう!

□たった一言で満たされる
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「知ってますか正ちゃん」
「何を」
「貴方後輩の女子にキャーキャー言われてますよ」
「え?」
「眼鏡。格好良くて素敵な先輩だってさ。ほら、私の言った通りでしょ。その眼鏡にした途端きゃあきゃあと…」


もう3年生になって数ヶ月。今日は何度目かの家デートだ。ちなみにいつも家デートは僕の家。別に変な意味じゃなくて、名無しさんが自分の家は散らかってるから嫌らしい。さすがにベッドに寝っ転がるのはやめてくれって何回も言ってるのに止めてくれる気配がない。


「私の目は正しかった。正ちゃんだけにね」
「…今のって」
「そこは触れなくて良いんだよ正ちゃん。ていうか食い尽く所違うでしょ!モテモテなんだよ?後輩だけじゃなくて同じ学年の人にだって」
「別にモテモテじゃなくていいよ」


そう言うと名無しさんは呆れたというように溜め息をつき本当に自分のこと興味ないんだねと呟いた。自分ではそんな事はないと思うのに。


「別に興味がない人にモテたって仕方ないよ。名無しさんにモテてたらそれで良い」「な…」


いきなり紅茶を飲んでいた名無しさんはむせる。見ると顔を赤くしてこっちを見ていた。

「正ちゃんってさ…時どきさらっと凄いこと言うよね」
「そう?」


逆に名無しさんは照れ過ぎだと思う。今思えば彼女の照れた顔ばかり見てる気がする。名無しさんって積極的というか人目を気にしないくせに結構照れ屋だよな…


「ねえ」
「ん?」


振り返るとベッドに寝っ転がってる名無しさんが動いたのが見えた瞬間、短いリップ音が響いた。


「あは、奪っちゃった」
「なっ…」
「あは、顔赤ーい。良い加減慣れたらどうです?入江さん」



僕の反応を見て頬杖をつきながらしてやったぜという顔をして言う名無しさん。なんだか負けた気がして僕は彼女の腕を掴む。いきなりの行動に驚いている名無しさんの口に強引にまた口付けた。


たった一言で満たされる
(あれ、照れ屋って僕の勘違いだったかも)




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