あいらぶゆう!

□鏡よ鏡よ鏡さん
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ズガァン


ヴァリアーのボスが白蘭さんの部下を撃ち、周りに銃声が響いた。
これで終わった。白蘭さんは既に10年前の綱吉くんに倒された。…犠牲は出てしまったけど。全て、終わった。


「いや…全てじゃない、か」


みんなを10年前に返すという大事なことがまだ残ってる。綱吉くんも守護者のみんなも女の子達も……名無しさんも。元の時代に戻り、僕たちの時代の名無しさん達が目覚める。これは僕の仕事だ。しっかりしないと。


「入江さん」
「あ、………名無しさん!大丈夫!?」
「…はい」


声に振り返ると名無しさんがいた。けどそれに驚いたんじゃない。名無しさんは全身傷だらけで出血もぱっと見ただけでも酷いと分かった。弱々しく返ってきた返事に本当に大丈夫なのかと焦る。


「そんな慌てなくて大丈夫です。こんな傷くらい」
「駄目だよ!ちゃんと手当てしないと」
「入江さん」
「……なに?」


言葉を遮るように名前を呼ぶ名無しさん。なにかと聞くと名無しさんは表情が真剣なものに変わり僕の体を触り始めた。


「ち、ちょっと名無しさん!?」
「私なんかより自分の心配したらどうです?」
「え…」
「何本か折れてます」
「…………痛いと思った」


そう言うと名無しさんは自分のことなんだから関心を持てと怒り始める。怒るというより叱るという方が正しいかもしれない。叱りながらもちゃんと僕を支えてくれる名無しさんに笑ってお礼を言う。すると彼女の動きが止まりみるみるうちに顔が赤くなっていく。………10年前の名無しさんは素直で可愛い。いや大人の名無しさんも可愛いけどこんなんじゃ照れたりしないし。ていうか高校生の頃だってそんな照れてなかったと思う。だからか新鮮な感じがして少し悪戯をしたくなる。もう一度笑顔でお礼を言った。


「本当に人をよく見てるね。ありがとう」
「べ、別に……」


名無しさんは視線に耐えられなくなったのか目を逸らす。そして、きっと独り言だったんだろう。ボソッとと聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで呟いた。


「私がよく見てるの……入江さんだけですから」



聞こえた言葉に今度は僕が赤くなっているのが分かった。ああ、駄目だ。10年前の名無しさんならこんなことないかと思ってたのに。無自覚な分こっちのが破壊力があると思う。
鏡よ鏡よ鏡さん
(やっぱり僕は名無しさんに勝てないらしい)



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ヒロインの言葉の真実。実は「私がよく見てるのツナと入江さんだけですから」って言ってます。 良いとこだけ聞こえて照れる入江さんとか可愛いと思う。




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