あいらぶゆう!

□内気なヴァイシェーシカ
1ページ/1ページ




「お、おかえりなさい」
「…ただいまです」


正一は学校から帰って来た名無しさんを出迎えると名無しさんは少し驚いたような顔をした。
正一が、白衣を脱いだエプロン姿で出て来たからだ。


「あの入江さん」
「あいつらに会わなかった?大丈夫?」
「だ…大丈夫ですよ。」


名無しさんは全く関係無い一般人。自分のせいで彼女が危ない目にあうのは絶対に嫌だと正一は苦い顔をする。
それに気付いたのか名無しさんは苦笑いをした。


「ただ、さっき教えてもらった入江さんの住所…近くまで行ってみたらあいつらの仲間みたいな人が何人かいました」
「そっか…。―――って、近くまで行ったの!?駄目だろ!いくらケンカ強いからってそんな危ないことして!」


怒ると名無しさんはケロリとした顔をして「大丈夫ですよ」と流した。
流した、というより本当に気にして無いんだろう。チンピラから助けたことも朝会ったばかりなのに正一を家に匿うこと、何も危険に感じてないのだろうか。
名無しさんは恐怖感というか、危機感が乏しいのかもしれない。
ただの一般人、ましてや高校生がここまで順応力があるなんて。


「……君の頭を覗いてみたいよ」
「私も入江さんが気になります」
「え?」
「さっきからずっと気になってたんですけどエプロン着けて…どうしたんですか?」
「ああ、これ?お世話になったんだから夜ご飯でも作ろうかなと思って」
「ご飯…」


呟いてキッチンを覗く。名無しさんは漂ってくる匂いに目を輝かせた。


「誰かの手作り…久しぶりです」
「なら良かった」
「私のことは気にせず、ずっといて下さいね」
「……そんなに嬉しかったんだ」




内気なヴァイシェーシカ


「ご飯無くてもいてくれて良いんですよ?寧ろ入江さんといると落ち着くし。ずっといてくれて構いません」
「―――ッ!?」


他意はないんだろうがそんなこと言わないで欲しい。
お願いだから、危機感は持ってくれ。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ