短い小説

□がっさく!!
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『よし、準備はいいか梓?』

「もちろんです!」

みんなの前にくると、隆治と梓は椅子に腰かける

「おおっ!何かそれっぽいな!」

『そのものだよ…』

律の言葉に反射的にツッコミを入れてしまったが

何はともあれ、みんなの拍手が二人を包む

『よし、いくぞ』

「はい」

『1、2、3、4』

隆治がアコギのボディをコンコンと叩き、リズムをとる

それに合わせて梓との呼吸が重なる

ジャーン…

アコギ独特の柔らかな音色と

透き通った隆治の歌声が音楽室を埋め尽くす

「おぉ…」

漏れる吐息も全て

溶けていってしまう

そんな不思議な感覚が彼女達を取り巻いていた






『…おーい、なに惚けてんだ』

「はっ!」

終わってもなお余韻に浸っていた彼女達は、隆治の手によって我に帰る

「まだこれは試作の段階ですよ?」

「えっ!?これで!?」

じゃあ完成したらどうなっちゃうの!?

と、彼女達は素直に感じていた

「それにしても…すごく綺麗な曲だな」

『だとよ。梓、自信持っていいぞ』

「そんな…先輩が手取り足取り教えてくれたからですよ?」

そんな謙遜してるけど

梓も結構センスあると思うよ?

「隆治さんの声もとっても素敵で聞き惚れちゃいました…♪」

『そんな…俺なんてまだまだだよ』

そう言ってくれたムギには申し訳ないが

今のじゃまだまだ気持ちが伝わりきらないと思うんだよね…

「そんなことないよ?すっごく曲と合ってたもん!!」

『唯…サンキュ。ムギもありがとな』

まぁ…まだいいか

でも新歓までにはもっとすげーのにしてやるからな





「えへへ…♪」

『ん?どした梓?』

「なんだか隆治先輩と一緒にできたのが嬉しくて…今更ですけど…♪」

いきなり頬を赤くして笑いだしたから

何かと思ったよ

隆治はポン、と梓の頭に手を置いた

「!」

『俺も梓のおかげでいろいろ勉強になったよ。ありがとな♪』

隆治は満面の笑みを浮かべると、頭をわしゃわしゃと撫で始める

「んんぅ〜♪隆治せんぱ〜い♪」

『はははっ♪』

「ホント…仲のいいもんだな…」

二人の相変わらずのやり取りに、律はたまらず溜め息を漏らす

『さ、もう少しやっちゃいますか』

「はい!」

「うふふ…♪今お茶淹れますね♪」

二人は再度曲作りに向かう

「隆治先輩」

『ん?』

「頑張りましょう!」

『おうっ!』

二人の視線がぶつかり

梓が笑うと

隆治も笑う

アコギ片手にペンが走る

最高の曲をみんなに届けたい

その想いをこの指先に込めて…



そんな二人の姿を

みんなは微笑んで見守っていた


→あとがき
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