長い小説

□#6 学園祭へ向けて
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俺は澪を呼び出して、隣のやや小さめの部屋に来た

「こっちも借りたのか」

『うん、澪のヴォーカル練習の為に特別に♪』

きっと、いきなりみんなの前で歌うのは澪には酷かなと思ってね、と付け加えておく

『じゃ、始めてみよか』

「う…うん…」

俺がピアノで音をとってみる

しかし、澪は思ったように歌えない

『…俺だけでも恥ずかしい?』

「…ちょっと」

澪の言葉に俺は少し考え込む

『ちょっと聞き方がおかしいかもだけど…澪はさ、どうして恥ずかしいと思ってる?』

「え?」

少しの沈黙。そして

「み…みんなの前で歌って…上手く歌えなかったり、間違えたりしちゃったらって考えたらっ…!怖くって…」

俺は澪の答えを黙って聞いていた

澪は辛そうな顔をし、震えてしまっていて

そんな澪の頭を俺は無意識のうちに撫でていた

「!?…隆治?」

『うーん…やっぱり自信を持って臨めるようにしたいなぁ…』

「でもっ…どうしたら…」

澪の目元から一筋、二筋と雫が頬を伝って流れていく

ありゃ

参ったな…

俺はまとまらない考えをなんとか頭の中で整理して、一度大きく息を吐いて言った

『結果ばかりを考えちゃダメだ』

澪は目尻に涙を溜めながらも俺を見てくれた

『もちろん結果目標を持つのは大切なんだけど、結果をどうしたいか…じゃなくて、澪がどうありたいかを考えてみたらどうかな?』

「どう…ありたいか?」

『そう♪』

俺は澪の目尻の涙を払ってやると、澪はゆっくりと話し出した

「私は…この曲を…みんなでこの曲を完成させたい」

そう言った澪の顔は、どことなく自信持ててきた、そう感じられる

「私たちの…軽音部の始まりの曲だから!!」

正直驚いた。ついさっきまでの澪だったら、絶対こんなこと言えなかっただろうに

『ふふっ、そゆこと♪』

今一度、澪の頭を撫でてから俺はピアノの方へ向き直す

『さぁ、いくぞ澪!』

「うんっ!」

なんとか…学園祭には間に合いそうだな♪
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