短い小説

□がっさく!!
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ある日の放課後…

颯爽と音楽室に向かう一つの影があった

ガチャッ

『こんちはー…って誰もいねー』

隆治は勢いよくドアを開けるも、そこには誰一人姿が見えなかった

『よっと』

隆治は自分の席に腰かけると

一枚の紙とまだ手のつけられていない五線譜を取り出した

その紙には、隆治が書いたであろう詞がメモのように綴られている

『さて、どんな曲にしようか…』

テンポ、拍子、曲調…

隆治は目を瞑ると思考を巡らしていくつものイメージを頭に浮かべる

が、なかなかピンとこない

『んー…どうしたものか…』

いつも決して悩まずにできるわけではない

今回はいつもに増して思い浮かばないのだ

隆治が頭を掻きながら唸っていると

ガチャッ

「こんにちわー」

誰かがやってきたので顔を上げ、そちらを見ると

『お、梓…こんにちわ』

やってきたのは梓だった

「先輩だけですか?」

『うん、まだ来てないよー』

すると、梓は隆治の手元にある五線譜に気がついたようで

「わぁ、作曲してるんですね」

荷物を置くとすぐに駆け寄ってきた

『うん。でもね、まだ浮かんでこないんだよね−…』

「そうなんですか…」

少し悲しそうに笑う隆治

すると、それを見ていた梓が何か思い付いたようだ

「先輩?私も作曲をお手伝いしてもいいですか?」

『えっ?』

思わず素っ頓狂な声をあげてしまった

「だって前に言ったじゃないですか。新歓とかでいっしょにやろうって」

隆治は首を傾げ、記憶を遡ってみる…

『うーん…言ったかも…』

「ですよね♪」

梓は顔を綻ばせる

『わかった、一緒にやろう。俺もずっと悩んでたしさ』

「はいっ!!」

梓は満面の笑みで答えると

隆治の隣に座る

すると隆治は梓の前に詞を差し出した

『詞はできてるんだよね。今回はアコギでいこうと思ってたんだけど…』

梓は隆治からそれを受け取る

「…sigh…?」

『吐息、だよ』

頷きながら視線を下にずらしていくと

梓は突然顔をひきつらせる

「うっ…英語ばっかり…」

『ははっ!それほどでも〜♪』

「誉めてないですよ!!」

そんなこんなやり取りをしながらも、隆治の指導の下、梓はちょっとずつ譜面に起こしていく

なんとなく曲の形が見えてきた

『ふむ…』

「あの…こんな感じで大丈夫ですか…?」

梓がどこか不安そうな顔で聞いてくる

『うん、いいじゃない♪詞の雰囲気をうまく出してくれてるね』

「本当ですかっ…んっ…♪」

梓の頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細める

『ああ。それとここをこうしてみたらどうだろう?』

隆治は梓の頭から手を離すと、ペンを手に取りアイディアを出す

「なるほど、こんな感じですか?」

『そうそう、するとここがグッと深まった感じがしない?』

「へぇー、こんな表現の仕方もあるんですね」

こんな調子で笑い合いながら

二人の共同作業が進んでいった
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