長い小説

□♯15 挑戦〜新たなる世界へ〜
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『うーん…』

「隆治先輩」

『……』

「隆治先輩っ!」

『へっ!?あ、あぁ…梓?』

「大丈夫ですか…?」

『うん…多分』

「隆治さん、お茶どうぞ」

『あぁ、ありがと』

隆治はムギから紅茶を受け取ると

ゆっくりと啜っては一つ溜息

目を瞑りながらまた俯いてしまう

こんな日がここ数日、毎日続いている

「隆治先輩…大丈夫でしょうか?」

「だよなぁ…さすがにこう何日もこの様子じゃな…」

隆治の悩みの理由を知っているだけに、彼女たちも心配が絶えないようだ





遡ること数日…

隆治はメンバーと話を進め、いよいよオーディションを受けることを決意した

しかし、いざ連絡をとってみるとあまり肯定的な返事をもらえなかった

それもそのはず

隆治たちにはまるで活動実績が無かったのだ

『そうだ…考えてみれば俺たち学園祭でしかライブしてねーんだ…』

そこにはやはり時間という大きな壁が存在した

メンバーが揃う機会が非常に少ないこと

そして、隆治が独り暮らしであることだ

自ずとバイトに費やす時間も存在する

『ライブハウスでライブっても費用も工面しなきゃならないし…』

隆治はあらゆる方向から考えるが

全く考えがまとまらない

『くそっ…!俺はバカだっ!!これじゃあいつらに申し訳が立たねぇよっ…!!』

隆治は声を荒げて机に拳を叩きつける

俺のせいで約束を果たせなくなる

そう思うと自分の無力さが重くのしかかる

おかげでここ数日、食事も碌に喉を通らず

寝ることもままならない

そして、今に至るが

隆治には未だに今後の方針を見いだせずにいた





『だぁーっ!!くそっ!!』

バァンッ!!

「!?」

隆治が考えのまとまらないもどかしさに机を叩くと

練習をしていた彼女たちは驚き、演奏を中断してしまう

音楽室がしんと静まり返る

「なぁ隆治、少し落ち着いて休んだ方がいいって」

律は隆治の身を案じて声をかける

『あぁ…ごめん』

隆治は少しばかり落ち着きを取り戻し

ふぅ、と深呼吸をする

結局今日もいい考えが浮かばなかった
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