長い小説

□#1 入部
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転入してから数日が経った。お決まりの質問責めの日々からもやっと解放され、今、主人公こと朝比奈隆治はいつも通り朝買ってきたコンビニの弁当を食べ終え、初めて静かに昼休みを過ごしている。

『ふわぁ……眠ぃ……』

うとうとしていると、少し前の方から聞こえてくる声が耳にとまった。

「えっと…これがCで…これが……」

声の主と思われる一人の女の子が目に入る。

「これが……G?…あれっ?こっちだったかなぁ…?」

『Gはこうだよ』

気が付く頃にはすでに体が動いていた。

「ふぇ?」

『これは……で、こっちが……』

「あっ!そっか!……ありがとう隆治くん♪」

満面の笑みを返してくれた。

『……えっと確か…』

「平沢唯だよ♪唯でいいからね。隆治くんもギターやってるの?」

『ん…まぁちょっとかじったくらいだけど……』

「そっかぁ♪……ねぇ隆治くん、軽音部入らない?」

『ん……ごめん。悪いけ…「私からもお願いするよ!!」

いきなり言葉を遮られた。それとともにもう一人の子の存在に気付く。

『?』

「あっ、りっちゃん!どしたの?」

「いやぁ唯を襲おうとする男がいたから見に来ちゃった♪」

……襲う?……俺がか?

「ゴメンゴメン!冗談だよ〜♪」

誠にいかがわしい冗談である。

「私は軽音部部長の田井中律。君は?」

軽音部の部長……か。デコ広いな……

『俺は朝比奈隆治』

「それでどうかな軽音部?」

一方的に話が進む。律には遠慮という言葉はないのか?

『……悪いけど忙しくてなかなか行ける状態じゃないしさ…』

「そんなぁ……じゃ、じゃあ見学だけでも!」

涙目になってしがみついてきた。なんか段々可哀想になってきた……

『……わかった。見に行ってみるよ』

「ホント?!さっすが話わかるぅ♪」

一気に表情が晴れる。見事律の術中にはまったようだ。

「じゃあ放課後音楽室ねー♪」

『……』

あまりに急すぎる展開に言葉を失った。

「……そっ、それじゃ放課後一緒に行こっ!」

『…そだな』
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