短い小説

□ココロ、トケル…
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放課後になった

少し憂欝な気分だった

私は重い足取りで音楽室に向かっていく

足元がおぼつかない…

たったあれだけのことでこんな気分になるなんて

思ってもみなかった

気付いた時には音楽室の前まで来ていた

ドアを開け、中に入ると

そこには…彼の姿があった

『お、梓』

「こ…こんにちは…」

あのときのことを思い出すと

顔を合わせ辛かった

私は俯いたまま荷物を置き

そのまま彼の隣に座る



『なぁ、梓…どうしたんだよ?』

少し間をおいて隆治は梓に問いかけた

「別に…何でもないです」

梓は顔を上げることなく隆治の問いに答えた

『んなわけあるか。何も無くてそんな顔するはずがないだろ?』

「…」

確かにそうだ

しかし、言えるはずもなく

梓は押し黙ってしまう

『なぁ?何であの時行っちゃったんだ?』

「!」

その言葉で、あの時のことが頭に蘇ってくる

あの時の感情が

再度、私の中から滲み出てくるのを感じた

『俺、梓と話したかったんだけ…』

「よかったじゃないですか」

彼の話を遮った

私が悪いのに

彼には決して非はないのに…

私の感情に抑えがきかなかった

『え?』

「よかったじゃないですかっ!!先輩はみんなからチョコ貰って嬉しかったんでしょう?」

『なっ!?おい梓!!』

「ならもういいじゃないですかっ!!放っといてください!!」

『梓ぁっ!!』

「どうせ先輩はっ…!?」

瞬間、隆治が梓に抱きつき

それに驚いた梓はハッ、と我に返った

『それ以上…言うなっ…!』

途切れ途切れに発する彼の横顔は

とても辛そうだった…

「あ…先輩…ごめんなさいっ…!」

一粒、また一粒とこぼれた涙が

次第に止まらなくなって

私は先輩の胸の中で肩を震わせて泣いてしまっていた
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