短い小説

□がっさく!!
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「……よしっ、できましたっ!!」

『おぉー』

いよいよ曲が完成したようだ

嬉しそうに笑う梓の横で隆治が手を叩く

「それにしても皆さん遅いですねー…どうしたんでしょうか?」

『さぁ…どっかで寝てんじゃねーか?まったく…』

「(えー…隆治先輩…)」

それを言っても説得力がないよ…、と梓は心のなかで訴えている

『…よしっ、じゃあ早速弾いてみるか!』

すると突然、隆治は懐からアコギを2本…

『ほい、梓』

「あ、ありがとうございます…って何故懐からアコギ!?」

『俺の懐は5次元だって前にも言ったじゃーん♪』

ふにゃっ、と顔を綻ばせる隆治

「(一体あの懐はどうなってるんだろう…?)」

隆治の笑う顔に梓は頬を赤らめながら、どうやら気になるようで隆治を見つめ続けていた

すると

『どうした?気になるってか?』

「っ…!!」

梓が気がつく時には既に目の前まで隆治の顔が迫ってきていた

梓の顔が一気に赤く染まる

『ふふ…教えなーい♪』

途端、隆治は梓を包み込むように抱きつき

唇を重ねた

「んんっ!?」

突然の出来事に梓は目を見開く

そんな梓の驚く顔を見て隆治は笑っていた

「もう!学校じゃダメですよ!見られてたらどうするんですかっ!」

『そん時はそん時だ。さ、やってみよか♪』

そう言うと隆治はさっさと準備を始めてしまう

「もぅ…」

梓も呆れて溜め息を一つつくとやがて準備を開始する





『よし、いいか?』

「はい」

お互い準備を終えると、二人は顔を見合わせる

早速合わせるようだ

『1、2、3、4』

隆治はリズムをとると、梓もそれに合わせて身体でリズムをとる

演奏が始まった

リードを梓が、リズムとヴォーカルを隆治が担当するようだ

しっとりとしたメロディと澄んだ声が音楽室に響く

それにしても、二人とも初めての曲をここまで弾けるのだから流石である

ジャーン…

演奏が終わる

静まり返る音楽室

「んー、何か違いますね」

『だね。ここだよね』

今の演奏を振り替えって、どこか違和感を感じたのか

早くも譜面を修正しはじめる二人

その後も、弾いては修正し、弾いては修正してを延々と繰り返していった










それからまたしばらく経った

久しぶりに音楽室の扉が開いた

ガチャッ

「ふひ〜…こってり絞られたよ〜…」

「まったく…律がしっかりしないからだろ!!」

「すみましぇ〜ん…」

「ごめんなさい。遅くなってしまって…」

4人が次々とやってくる

どうやらみんな一緒にいたのだろう

『お、随分遅かったんじゃねーか?』

「さわちゃんに捕まってたんだよ〜…ツイてねーなぁ…」

盛大に溜め息をつく律

しかし

「律が掃除サボったとこをさわこ先生に見つかってな…連帯責任だって…」

私クラス違うのに…と澪が呟きながら理由を話していく

ムギと唯も苦笑いだ

「律先輩…」

『ダメだぞ律、サボるならもっと巧妙にやらんと』

「もっとダメですよ!」





「ところで隆治くんとあずにゃんは何をやってたの?」

二人して普段見ないアコギを持っていたからか

唯が問いかけてくる

すると二人は一度顔を見合せ、みんなの方を向きなおす

『「合作(です)!!」』

二人の声が重なる

隆治はVサインをつくってはみんなに見せびらかす

「合作?」

『そ!合作!』

「あの柑橘類の?」

「それは“はっさく”よ唯ちゃん…」

「これを新歓でやろうと思うんです」

梓の言葉にみんなが感心する

「へえ−、すごいな!」

『にしてもお前らは運がいいな。さっき一通り出来上がったばっかりだぜ?まぁ、まだ不完全ではあるけどな』

「本当か!!」

みんなの目が輝き出す

その表情は言わずとも弾いてくれ、と訴えかけている

『よしっ、じゃあいっちょやってみるか!』

「はいっ!!」
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