短い小説
□Rain.
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『……はぁ。』
今、俺は屋上に向かう階段の半ばあたりに腰を下ろした。
別に行くあてなどなかった。
ただ、他人に悟られたくなくて
ただ、独りになりたくて
行き着いた所がここだった。
『…雨…か。』
そう口にするだけで気が重くなる。
雨の日に良い記憶など無かった。思い出すのは忌々しい記憶ばかり。
俺がまだ幼い頃、既に両親はいなかった。
そのせいで小学生の時にいじめられた。
それまで気にも留めていなかったのに、その日、自分の中で何かが壊れた。学校の中ぶっ壊しまくっていた
正直今ではその時の記憶は殆ど無いが、その日は雨だった事は何故か鮮明に覚えている。
爺ちゃんが死んだあの日。そう、1ヶ月程前だ。忘れることのないあの日も雨。
俺のすべては雨に奪われてしまったのではないかとさえ錯覚する
『……雨は…嫌いだ…。』
また自分を見失ってしまうのではないか、
また何かを奪われてしまうのではないかと思うと
怖くて…
怖くて……。
あれから…どれくらい経っただろう
俺が戻らなくてみんな心配してるのかな…
『…戻るか』
と、立ち上がったが、目元は腫れ、頬は濡れていて…
『ハハ……でもこんな顔じゃあな…』
そんな時だった。