The Heroine's smile
□第7話〜Another2・苦難〜
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「果隠、寿也くんまたホームラン打ったんだって。」
「へぇー。」
「何よその無関心さはぁ、あんたこの間言ってくれたじゃん。寿也くんが東京ウォリアーズに入るんだって。」
お父さんは夜遅くまで仕事、一人っ子の私にとって毎日夕飯はお母さんと二人っきりだった。
カァァァァン!!!
そんな今日の話題は奇遇にも寿也のことだった。まぁテレビでウォリアーズの試合をやっているのがついているからのせいだろうけど。
―――――パシィィィッ!
「そう言えばお母さん、頼んでたあれ用意してくれた?」
「あぁ、野球の本でしょ?ちょっと待ってね。」
そうそう、私はお母さんにあるものを用意するように頼んでいた。それは…
「はい。ベースボールウィーク、これでいいんでしょ?」
「うん。あ、これから毎週お願いね。ごちそうさま。」
「えぇ?ちょっと果隠?」
バタンッ
「もう…。」
「………。」
私は部屋にこもってベースボールウィークと睨みあうように目を通していた。
「キャッチャーの組み立ては…やっぱそれぞれかぁ。」
私は寿也がプロ入りしたことをきっかけに、本格的にプロ野球についても勉強しようと思った。そのためにはまず、プロで活躍しているキャッチャーのことについて調べるためだった。
「同じ配球をするのは、ピッチャーのことを信頼してるからこそ…。」
プロ野球って調べると案外面白い。同じキャッチャーなのに12球団それぞれ考え方が違う。
特にこいつ…
”ウォリアーズの新星に独占取材!”
『佐藤選手にとってキャッチャーとは?』
『全てにおいて責任を感じるポジションです。』
「責任…?」
私は意味深に思った。寿の発言によく意味がわかない、何よ責任って。
「まぁいいや、どうせプロと部活じゃ変わらないだろうし。」
カチッ
そう呟いて部屋の明かりを消して眠りに入った。
まだこの時に私は、それくらい何もわかっていなかった。