短編
□SHOOTING☆STAR
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「ふぇ……っくち」
吐息が白く色づく、夜11時。明日の朝には雪が積もるだろうと気象予報士が予告していた通り、すでに雪が薄く積もって、あたりをほの白く照らしていた。
「ほら、モモ。やっぱ寒いんだろ? 風邪引く前に家入ろ」
ぴたりと隣にくっついて座る桃香は、鼻をすすりながら、いやいやと首を横に振った。
「やだ、あたしまだ見てないもん」
「夏にでも見れるって」
「いや。今がいい」
小学生かとツッコみたくなるような理由を並べて、桃香は再び無数の星がきらめく夜空に視線を向ける。
なんたら座の流星群が今夜ピークを迎えるらしいと、教えた俺が馬鹿だった。
それなら一緒に見ようと半ば強引に押しきられ、空がきれいに見えて人のあまり通らないところとして第一候補になぜか我が家の屋上を挙げられ、まさか本気じゃないよなと早々に寝支度をしているところに彼女が押しかけてきた。
両親は驚きつつもまあ桃香ちゃん久しぶりねと歓迎し、どさくさにまぎれてまんまと俺をつかまえて屋上に連れ出した。
それから彼女はずっと(かれこれ1時間くらい?)目を凝らして空を見上げているが、まだピークがきていないのか、流れ星は見つからない。
ちなみに俺はもう2回ほど見たのだが、桃香は見逃した。
「あと5分な」
体育座りの足の間に座らせるようにして桃香を抱き込む。もともと風邪っぴきの桃香に必要以上の夜更かしをさせてはいけない。
「ようちゃんあったかいね」
「そっか? ほら、これ飲んどけ」
母さんに渡された魔法瓶入りのたまごスープを桃香に握らせる。
ずずずず、とまるで日本茶のようにたまごスープをすすった桃香は、おいしい、と言ってにこにこ笑う。
桃香は昔からこうだ。
喜怒哀楽がせわしなくて、ちょっとしたことですぐに怒ったり泣いたり笑ったりする。
あまり感情を表に出さない俺とは真逆の桃香が、うらやましくもあり不可思議でもある。
まあ、でも、結局。
惚れちゃってるわけで。
「流れないね……」
「いい天気なのにな」
雪を降らせた雲はいずこかへと流れ去り、今は美しい星空が空の大部分を占めている。
これだけ星があったら流れ星なんて気づかないかもしれないな、と思った、時。
すい、と一筋、光の線が流れた。
「あ」
けれど、声をあげたのは俺だけ。
俺の声を聞いた桃香は、ばっと俺の顔を見た。