銀魂
□昇降口は目の前
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入学してから今このときまでの時間は思っていた以上に長く、短かった。もう二度と座ることのない椅子に座って教室を見渡す。
このクラスに静かなんて言葉はなくて、いつだって騒がしかった。始めは戸惑ってばかりだったけどそれもいつしかなくてはならないものになっていた。
大好きだった窓際の後ろから2番目の席。授業中はよく窓の外を眺めてたっけ。夏は暑いし冬は寒かったけど、春は太陽がすごく気持ちよくてうたた寝してたら先生に頭を軽く叩かれたなァ。
こうしてここに座っているとまた明日も学校があるように感じる。
そんなことはないのにね。
だってついさっきあのバカ校長から卒業証書をもらってきたばかりだもん。もう明日からはこの教室に皆が集まることはない。
「なんだァ〜、まだ残ってたのか?」
「銀八…」
「神楽達が探してたぞ〜。打ち上げについて話があるみてェだったが。」
「うん、今行く。」
ヨレヨレの白衣、ぺたぺたサンダル、くわえ煙草がトレードマークの先生が今日はスーツを着てる。………でもシャツのボタンは第2まであいてるけど。
普段の先生も大好きだけど、スーツ姿もかっこいいなァって思っちゃうあたり重症だ。
ずっとずっと大好きだった先生。先生の隣りを歩くのもこれで最後だと思うと胸が苦しくて息がうまく吸えなくなる。
でも私は意気地無しだから、先生にこの気持ちを伝えることはできないんだ。柄にもなくこのまま時が止まればいいなんて。そうすればずっと先生の隣りにいられるのかなって考えちゃったり。
昇降口は目の前
あぁ、あと5メートル
(先生、大好きでした)
080301