tennis
□恥ずかしいから。
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いつもこの人は
甘え上手だ。
でも俺は絶対
この人に甘えなんか
しない。
【恥ずかしいから。】
ある日の登校途中。
財前がぼんやりしながら歩いていると、
「おはようさん〜」毎日そう言って誰かが後ろから抱きしめようとしてくる。でも、
「ほんま、毎日毎日。マジウザいっスわ謙也さん。」
財前はいつものように交わし、スタスタ歩って行く。
もうこれが1年半。お決まりのことで「つれないやっちゃなぁ」と追いかけて頭をグシャグシャ撫でる。
人の考えなんて知りもせず。
そして放課後。
「・・ッ光、一回ッ休憩しよか!」
部活中ダブルスの練習の中、謙也は肩で息をしながらお願いのポーズをする。
「ダサッ。まっ、しゃーないっスわ」
と涼しい顔で謙也を見下ろす。
すると一目散にベンチに座りこんだ。
「・・さすがスピードスター。呆れますわ」
「おおきにッ*゚」
怒られてることも気にせず置いてあった水を飲み干してく。
「・・それワイのです。」
とベンチの後ろに立ち、持っているそれを取り上げる。すると、
「なぁ、光?」
不意に財前を見上げ。
「何んすか。」
けれど財前の表情は変わらない。
「なんでいつも後ろに立つん?甘えられへん。」
沈黙。
「光、顔赤いで?」
−バシッ!
「ドアホォ!何すんねん!?」
「・・謙也さんがワケわからんことホザくからこないなるんですわ・・!」
と言い捨てて何処に歩いていく。
「ひかっ・・」
追おうとするが、諦めて座り込む謙也。
「えらいキツイお姫さまやなぁ。」
その時の謙也はいつものヘタレじでわなかった。
気がする。
♯ ♯
財前は裏庭にいた。「やっちまった。」と思いながら池の鯉を見つめる。
甘える?そんなことしない。
と言うか
・・できない。
だって、キャラ的にあかんし
こんな林檎みたいな顔、謙也さんに見せる?
あかんあかん。
恥ずかしいから。そんなん。
End