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□涙を流した日々は幾億にも重なり合って大きな雨となる。
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その日の晩、皆が寝静まった頃に澪は部屋を抜け出した。

向かったのは屋根の上。
そこにいたのは……




「やっぱり…ココにいたんだね……マーちゃん



「……姉貴か…」




屋根の上に座っていたのは舞咲だった。

舞咲は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに澪が昔から舞咲とのかくれんぼなどが得意だったのを思い出す。

この人には舞咲のことが、何でもお見通しなのだ。




「ちなみに聞くけど姉貴……それ荷物に入れて来たの??



「……うん…」




コクリと頷いた澪が抱いているのは相棒の黒猫。
通称、みーくんである。

どうやら澪はみーくんを荷物の鞄に詰め込んで持って来たらしい。

だが本人はそんなことなど全く気にしていないような様子で、舞咲に話し掛けた。




「色和ちゃんと何かあって、部屋に行けないんでしょう??
…あの子もいるから……」



「………」




舞咲は答えない。
否定しないのは、肯定しているということになる。
澪は続けてこう言った。




「…マーちゃんにね…言っておきたいことがあったの…」



「……んだよ??」




そう答えた舞咲に、澪は後ろからそっと抱き着く。
そして、小さな声で呟いた。




「…ここにいるよ……マーちゃん。
私はずっとここにいるの。
マーちゃんが辛い時も、悲しい時も、楽しい時も、嬉しい時も……ずっとずっとここに…」



「……姉貴…??」



「たとえ見ているだけでも、一緒に戦っているとしても……私はずっとここに……ね。
…だから……」




震えるようなか細い声……それでも今の舞咲が1番望んでいた言葉。




「だから…マーちゃんはね、1人じゃないんだよ…??
私は…ずーっと…ここにいるから…




そう囁いた澪は、抱き着く腕にギュッと力を込めた。

しばらくして、舞咲からもっと小さな声で返事が返って来る。










……ありがとう……




と。

聞き取るのも難しいくらいの、小さな小さな声。

しかし、澪は確かに聞こえてきたその声に小さく頷いた。








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