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□契約と言うものは大抵は呆気ない。
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少しおかしい。
そう気づいたのはついさっきであった。岳斗や愁助、新悟は気づいて居ないが深紅にさはっきりと異変がわかった。先程から客の五、六人がチラチラと様子を伺う様にこちらを見ている。そして、アイコンタクトをするかの様な仕種をみせる。

「…お待たせしました。」

なんの縁か、深紅はその中の一人に食べ物を差し出す。そして、帰ろうとした時であった。不意に客に手を捕まれる。それは、とても力が入っていて拒む事も出来なかった。

「っ――――」

「お客様?どうななさりましたか?」

異変に気づき制止しにくる岳斗。その時、岳斗は急に横倒れになる。バタリと床に倒れた岳斗。岳斗の頭から流れる物。それは血、であった。深紅が岳斗の後ろに立っている奴に目を向けるとソイツの手には血がついたバットが握られていた。多分、それは岳斗の物であろう。深紅が悲鳴をあげる前に客の悲鳴が響き渡る。血を見て逃げ出す客。残されたのは月波のグループと倒れた岳斗と愁助、新悟、深紅である。愁助と新悟に助けを求める様に顔を向ける深紅。しかし、その淡い期待は裏切られる。

「いや、いやぁぁ!!」


愁助は不意をつかれたのか、床に倒れていた。床に皿の様な破片があったのでそれで殴られたのだろうか。新悟はどこからやって来たのか、はたまた前からスタンバイしていたのか分からない客達に暴力を受けていた。たまに飛び散る血。深紅を恐怖に突き落とすには十分であった。深紅は客に囲まれる。ざっとみて二十人。多分、どこかから来た人達も増えたのだろう。


「なんでっ……」


「なんでだぁ?月波に頼まれたんだよ。お前を、殺せってな!月波はどっか行ってるみてぇだがまあいい。死ねよ。」


男は深紅の頭を殴りつける。その振動で尻餅をつく深紅。深紅の瞳には涙がたまっていた。







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