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□何年たったって、母親は母親。子供は子供。
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やめて!やめて!
やめて!!!
これ以上…………
音兎を傷つけないで…
やめて…
これ以上……
私から………
大切なモノを取らないで……
プチンッ―――――。
ずっと足を止めず走りだしている澪の耳に何かが聞こえた。何かはわからない。だけれど…何かが切れる様な…小さくても苦痛を訴える。そんな音だ。
エレベーターは使えない。なぜ?そんなの簡単だ。エレベーターなど狭くて敵が入ってこれば逃げ場などない。
まあ、今使っている階段も同じようなものなのだが…
しかし、
階段は、幅がある分、まだ身動きがとれる。
今、現在も異変を嗅ぎつけたお偉いさんの犬が襲って来ているが身動きがとれるので皆は簡単にやっつけている。
(直輝は舞咲や色和に頼まれ澪を守っているだけだが…)
「ねぇ…早くしないと…」
直輝が背中の色和に向かって呟く色和は分かってる。と言いたそうにコクりと頷く。
「なあ…舞咲…」
「あ"ぁ?」
舞咲は周りに居る敵を切り倒しながら色和に返事を返す。
「どうする?」
色和の発した言葉は短いが、意味が沢山詰まっている。そう感じる舞咲。
長年付き合ってきた勘というのか…なにも言わなくてもなんとなく分かる様になったな…と、舞咲はため息をつく。
あの四文字は、誰かを囮にしよか。と言う意味だろう。
誰が囮になるのだ?
そう、疑問に思った舞咲は色和に問い掛ける。
「誰がだ…?」
その言葉を聞いた色和は意味深に口元をあげる。そして、トンッと隣にいた直輝に肩を当て合図をした。
次の瞬間周りの敵は一気に倒れる。無論舞咲は何もしていない。
したのは…そう…直輝だ。
「行って?僕が引き止めるよ。」
そう言って守っていた澪を色和に渡す直輝。そして、犬の大群に突っ込んでいった。
「正気かよ!?あいつ…」
そんな直輝を見てつぶやく舞咲。そりゃそうだろう。周りを見渡しても敵・敵…味方なんて一人もいない。そんな状況で、しかも一人で戦うのだ。
もし、それが舞咲や色和なら多分生き残れるだろう…
しかし、直輝は特別運動が出来る訳でもない。
よくて、生存確率10%ぐらいだろう…それは、賢い色和ならよく分かってるはずだ…
舞咲は直輝を止めようとするがそれは色和に遮られる事になる。
色和は
思いっきり首を捕み走りだしたのだ。
舞咲は少しぐはっ…と言う声を漏らす。
ふっ…と見上げた色和の目には
何故か、小さな涙がたまっていた――――。
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