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□あの人が支えだった。
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「―――から、一班は食事、二班は接客、でよろしいですか?」


小さな可愛らしい何処から持ってきたか分からないがホワイトボードに書き込みながら担当のおばさんはこう言う。1組と深紅・新悟は口々に「はーい」とどこか抜けた返事をする。

ちなみに、
一班は12組の三人+色和、月波

二班は残りの岳斗、新悟、澪、愁助、深紅、舞咲、直輝である。

なぜ、接客の二班の方が多いかと言うとおばちゃんによると半分以上は客寄せであるらしい。岳斗、愁助、新悟は顔はいい。だから、女性受けを狙っての事のようだ。しかし、かといって一班が劣ってる訳でも無い。ただ、料理が上手くて器用だかららしいのだ。実際、色和や月波は男受けの良い顔をしている。と、おばちゃんは力説をしていた。

そんなおばちゃんにニコニコしながら澪はチラリと机を挟んで自分の隣、色和の後ろの席を見る。そこは、舞咲の席である。しかし、そこには人が座って居なかった。澪は誰にも気づかれぬ様にため息を一つつく。誰もがその舞咲が居ない事を気にしない事に。



しかし、一人全くもってその事に納得しない人がいた。澪もそうであるが澪よりも半分キレている。新悟でもなければ直輝でもない。無論、色和や月波などでもない。葛田である。



葛田はバスでみたっきり今まで、一度も見ていない。葛田は舞咲の過去は少し知っていた。月波との関係性もだからであろうか?戻って来ないのは。「裏目に出たな…」と葛田は一人心中でつぶやく。舞咲と月波と深紅この三人を一緒の部屋にしたのは仲良くなって欲しいからであったが、肝心の月波や深紅が居てくれるのは嬉しいがもっと重要である舞咲が来なければ意味が無い。



葛田は一つ大きくため息をついて舞咲を探すべく外にでる。その行動に一斉に皆は葛田に注目するがそれは担当のおばちゃんによるラップ音にて打ち消される。しかし、そのおばちゃんの音にも動じず新悟は葛田の後をついて行ってしまった。



「さあさあ!開店まで後、30分もありませんよ!早く用意しましょう!」


そうして渋々だつ皆。岳斗達は忘れていたのだ深紅の事を。そして、もうすぐ現実を間近に見て仕舞うことになる。

皆が立ち上がった瞬間大きなガンッ!と言う何かにぶつかった様な音がなる。1組の皆は一斉に音のなった方向へと顔を向けた。

ウザいんだけど!死んでくれない?1組に友達出来たからってさぁ…調子こいてんじゃねぇよ!!!


バン!と机を叩く12組の女子その目線の先には深紅がいた。深紅は怯えた様子で女子を見るがその女子は深紅の表情がムカついたのか、近くにあった濡れた汚いタオルやらを持ち深紅の頭に被せその上から水をかける。色和達はその悲惨な状況は目を伏せそうになりながらも止めようと足を一歩前に出すがそれと同時ぐらいにゴスッと言う信じられない音が聞こえる。その瞬間色和達は動きが止まった。目の前で繰り広げられる"暴力"と言う名の"イジメ"それを見るのは始めてであったのだろう。終いには深紅が「ごめんなさい…やめて…やめて」と必死で言っているのに関わらず下品な笑いをみせる女子。他の月波や女子などは止める気もないのだろう。月波に至たってはずっと、ニヤニヤと言う笑いを浮かべている。



やめなよ!


叫びににた声。その声の音源は澪であった。澪はプルプルと手を震わせながら月波達を睨む。それを見て月波達は大いに笑い出すがそれは愁助によって打ち消される。


テメェ達…たたっ斬る!!!


ガッと音をたてて剣を抜く愁助。しかし、切り掛かろうとした瞬間岳斗に手を掴まれる。その岳斗に睨む愁助しかし、岳斗は口を開かずにただ、フルフルと首を振るだけであった。無理矢理手を振り放そうとしたら、反対に強められる握力。愁助は諦めたのか手の力を緩めてしまう。月波達は愁助の脅しが効いたのか分からないがジリジリと後ろに下がり小さく舌打ちをした後に倒れている深紅にもう一度けりを入れて逃げ出す。



「深紅!!!」

「深紅ちゃん!」

同時に深紅に近寄る澪と色和。男子達は共に下唇をかみ締める。あるものは、女を守れなかった。あるものは、なぜ何も出来なかった?あるものは、事前になぜ予知が出来ない。と…

こないで!!!


響く深紅の声。澪を色和は一瞬にしてその場で凍り、男子達は一斉に深紅をみる。その深紅は傷がついた唇でしきりに「こないで…こないで…」と呟いていた。

「深紅…?大丈夫やで?アタシ達や、色和やで?」

ゆっくりあやす様に言葉を発する色和。しかし、深紅はしきりに震えながらこういう。

「あの子も…月波ちゃんもそう言った。大丈夫だって。友達だって。貴女達もそうじゃない…結局助けてくれなかった!見物して楽しんでた!!

その言葉が終わったと同時に聞こえるラップ音。澪が深紅の頬を殴ったのだ。その行動にその場にいた全員が目を開く。そして、澪は深紅に抱き着く。その奇怪な行動に皆は首を捻る。


「そんな、悲しいこと言わないで。私達は、絶対に見方なんだから。深紅ちゃんが何と言おうと…色和ちゃんも、岳斗くんも、直輝くんも、愁助くんも、ここには居ないけど、新悟くんも、それに…………マーちゃんも」



そして、ギュッと力を込める澪。その澪の反対側から色和は「当たり前やん」と抱き着く。その真ん中に「俺が女の子を守らない何てないだろう?」と言い岳斗も抱き着く。そして色和の上に「そうだね」と言い抱き着く直輝。その空気に押されてなのか愁助まで澪の上から抱き着く。その際に岳斗が「お姉様の体を触るなムッツリ」と悪態を着いていたのは触れない様にしておこう。そして、見事に周りからみたら山に成り果てた皆は一斉にこういう。



「次からは、俺達/アタシ等/私達が守ってやるから…/守ったる…/守ってあげるから…」



その言葉に深紅は涙腺が緩んだのかポロポロと声を上げながら涙を流してしまう。その深紅にゆっくりと皆は微笑む。その深紅の泣き声は朝の海の家全体に響いた。










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