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□愛する者の命ほど重いモノはない
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「いらっしゃいませー」
お昼時、海の家は盛況だ。
水着姿の客で賑わう店内を駆け巡るのは、接客組の5人。
忙しそうにレジを打つ岳斗、テケテケとトレイを持って走り回る澪、にこやかに接客をする直輝、オドオドと席に案内する深紅、意外に商売上手な愁助。
舞咲がいないのは昨日からだが、新悟は葛田を追い掛けてどこかに行ってしまった。
そんな2人の分までせわしなく動き回る5人は気付けなかった。
……厨房で起きていた事に。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時を少しさかのぼった厨房。
そこでは色和と、とある12組の女生徒がぎこちなく自己紹介をしていた。
「…えっと…ボウルってどこにあるかわかる??」
「アッチよ」
「ゴメンなぁ、ありがとう……えっと…」
「…吹雪(フブキ)」
「…?」
「名前。
…天空 吹雪(テンクウ フブキ)」
「あ、うん…ありがとう、吹雪ちゃん」
「吹雪でいいわ、ちゃんは付けないで……慣れてないから」
「そっか、ありがと吹雪。
ウチは色和って呼んで」
「…わかった、色和」
吹雪が指し示した棚からボウルを取り出す色和。
そんな色和はふと気付き、吹雪に聞いた。
「なぁ…天空って、もしかして……」
「あぁ…うん、晴紀の妹。
似てないんだけどね」
「やっぱりそうなんや……天空なんて苗字、珍しいもんな」
「ねぇ私も…色和に聞いていい??」
「…ん…?何や?」
少し月波に影響されたような、派手な化粧をしている晴紀の妹は色和に問うた。
「色和…舞咲ちゃんに嫌われたんだよね?」
色和が固まる。
「舞咲ちゃんは色和達と仲良しのふりしてただけで、ホントは全然信じてなかったんだよね??」
俯く色和を見る吹雪は、微かに口角を上げた。
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