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□契約と言うものは大抵は呆気ない。
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「あー、アイツは、あの鷹だよ。」

その舞咲の言葉に澪は更に疑問符を浮かべる。そんな澪を納得させるかの様に鈴霧はゆっくりと話し出した。

「えーと、簡潔に言うと、彼達は人間になれるんだよ。」

「ふぇ…?え、じゃあ、みーくんも?」

恐る恐る聞く澪に鈴霧は笑顔で頷く。そして、回りを確認するとこう言った。

「でも、ここじゃあ話せない。ちょっと来てくれるかな?…そこの異端契約者達もね?」

そう言って舞咲をみる鈴霧。舞咲は自分の事を指されて居ると気がつかないのか、後ろを向く。しかし、そこには誰も居なかった。前を向くついでにいつの間にか隣に来ていたハイドに目をやるとハイドは小さな、舞咲にだけ聞こえる様な声でお前だ、と短く言う。舞咲は目を丸くしながらウチ?と聞くと頷かれてしまった。渋々、鈴霧の後を着いていく澪、みーくん、ハイド、舞咲、そして風真。着いた場所は人通りが少ない、と言うかは全く舞咲以外の人が居ない場所であった。海の家、大丈夫かな?と言う澪に対して、舞咲は大丈夫だろ、と言いながら鈴霧を見据える。

「で、何なんだよお前。」

その言葉を聞いて澪も思い出したかの様な様子で鈴霧に問う

「そうです!ひゃくじゅうのなんとか、って何ですか?それに、みーくんが人間なんて…」

「うん、それなんだけどね。簡単に言うと、先程も言った通に彼達動物は人間になれる。そこの彼もそう、元は鷹なんだよ。ねぇ、舞咲さん、出来るかい?ハイドを鷹に戻す事、」


そう鈴霧に聞かれた舞咲は短い返事を返しながらも首に掛かっている鎖を手に取り願ってみる。すると、大きな風か吹き荒れる。次に澪達が見たのは青年ではなくて鷹であった。「ふわぁ…」「うわ、俺初めて見た…。」と聞こえる声、ちなみに前が澪で後ろが風真である。

「――と、言うふうになるんだ。でもね、こんなことが何時も起こって居たら世界は壊れてしまう。だから、それを制御する人が必要なんだ。それを『百獣の王権を司りし守護者』と言う。

難しく言うと、王権と言うのは種類があって、俺の『生き物から人間への進化』だったり、『生き物から物理的なモノへの進化』『生き物から前世のモノへの退化』だったりね。王権のその種類によって人が変わっていくんだ。


舞咲さんは俺の許可を取らずに契約を結んだ。主の願いを媒体として結ぶ契約者を『異端分子』と言うんだ。異端分子は俺が許可せずに却下したら元の形、進化、あるいは退化を余儀なくされる。でも俺が許可したので舞咲さんは『異端分子』として対処される事なく『異端契約』を継続中なんだ。まあ、あの許可の仕方は一番簡単な方法なんだけどね。普通の許可を出す場合はもう少し準備が居るんだ。


さて、白檀さんに質問だ。君は可愛い黒猫みーくんと信頼しきっている。あとは、人間になるだけだ。白檀さんは、みーくんと契約したい?しなくない?契約をしたら今より、沢山の血を見るかも知れない…―――大切な人を守りたい…?」


じっと、澪の目を凝視する澪はその圧力におされつつも一つ頷く。舞咲や、舞咲の兄を守れるならば、その一心で。すると鈴霧は今度はみーくんに問う。『クロネコみーくんは、白檀さんを守るかい?……命にかえても、ね』みーくんは頷く。その後であった。鈴霧は両手を上げ、その手の平をみーくんの頭、澪の頭に乗せる。ハイドはその格好をみて澪の隣にいた舞咲と鈴霧の隣にいた風真の首を掴み離れさせる。それを確認した鈴霧は不意に口を開いた。何を言って居るのかは分からないが、しきりに口を動かしていた。例えるならば呪文。シンデレラに魔法をかけた魔女みたいな、(これはあまで例えだが)














「百獣の王権を司りし守護者がこの時、このペアを契約する事を許す―――――。」

それが、澪達が唯一聞こえた鈴霧の言葉。



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