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□その炎、美しく揺らめく
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「マーちゃんっ!!」




澪の言葉を聞いた舞咲は一目散に海の家へ走り出した。
引き止める澪の声ももう舞咲には届かない。




−もう誰も傷付けない−




それは、今だ和哉が目覚めたことを知らない舞咲が、和哉に対してたてた誓い。

その言葉を…和哉を裏切ることはできない。

舞咲は、今にも怒鳴り出しそうな勢いで海の家に入る。
そこで舞咲が見たものは…




「…な…んだよ…これ…」




そう、それはまるで




「…新悟まで…これは…」









8年前と同じ光景


倒れているのは、自分が
わずかに心を許した少年で。

そこにあるのは
真っ赤な血、血、血、血、血


その場の何もかもが
8年前とデジャヴする



威勢よく飛び込んだはずの海の家で、彼らのおびただしい血の海を見た舞咲は、まるで8年前の事件が重ね合わさるかのような錯覚に陥りながら、その場に呆然と立ち尽くしてしまった。



そんな舞咲に向かって深紅が大声を張り上げる。
だが、その言葉も記憶の渦に捕われてしまった舞咲には届かない。




「…逃げて!」




そんな、深紅の悲鳴のような言葉さえ聞き取ることが出来なかった舞咲を、現実に引き戻したのは、背後から聞こえた澪の声。




「…マーちゃん…っ…!!」



「…あ…ねき…?」




その切羽詰まった声に異変を感じ取った舞咲が振り返ると、そこには刃物を持った男の腕にしがみつき、なんとか舞咲に向けられた刃物を奪い取ろうとする澪の姿があった。






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