×獄寺
□本心はどっち
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不意に山本が肩に腕を回してきた。
「なぁ、獄寺。お前って本当俺のこと好きなのな。」
「は?」
え、は、何?
意味わかんねぇ。
なんだコイツ、ナルシストか?
「獄寺って絶対俺のこと好きだぜ?」
「どっからくんだよその根拠。」
「さっき俺とツナは話してたら獄寺嫌な顔してただろ?」
「それでなんで俺がお前のこと好きになんだよ。お前、俺は10代目のことが好きなんじゃなかったのか?」
「え、昨日の?あれ、そういう意味で言ったわけじゃねえんだけど。」
「は?」
「だから、獄寺って本当に俺のこと好きなのなって意味なのなー。」
ニカッと親指を立てて俺に笑いかける野球馬鹿。
俺の顔が一気に熱くなるのがわかった。
「はぁ?!!意味わかんねぇよ!俺は別にお前のことなんて!!」
「俺は獄寺が好きなのな。」
「はぁぁ?!//////」
「獄寺さ、俺とツナが話してたら嫌そうな顔してたのに、ツナが笹川と話し始めたら、そんな顔しなくなっただろ?」
え、いや、それは考えすぎて頭が爆発していたからなんじゃないのか?
「つまり、獄寺は俺が好きなのな!」
「え、マジで?そういうことになんのか?」
「違うのか?」
「・・・わかんねぇ。」
「なんだそれー。」
「もうわかんねぇんだよッ!!」
頭がぐわんってなって視界が真っ暗になって、俺は倒れた。
「くでら・・・獄寺?!!」
意識が遠のくなか、俺の名前を呼ぶ野球馬鹿の声が聞こえたような気がした。
俺は10代目が好きなわけじゃなくて、
本当に好きなのは野球馬鹿・・・山本だった。
俺はそういう趣味なんてない、なんてのは違くて、
本当はもう山本を好きだった。
「んなわけあるかぁ!!!!!」
ゴッ
「「いってぇ!!!!」」
頭が何かにぶつかった。
「てて・・・獄寺!大丈夫なのか?」
目の前には額を押さえながら心配そうな顔をする山本。
「それはこっちの台詞だ・・・。俺、今倒れて・・・、」
周りをみれば、見覚えのある部屋。
ここは並中の保健室だ。
どうやらシャマルはまたいないらしい。
「そうなんだよ、獄寺イキナリ倒れてそのまま目さまさなくて、」
マジかよ。
やっぱり意識とんでたのか、俺今気絶してたのか。
朝から頭使いすぎたからか?
・・・朝からじゃない。昨日からずっと頭を悩ませていた。
「んで、なんで俺とお前が頭ぶつけてんだよ。お前なんでいんだよ。」
「それなんだけどな、獄寺が全然目ぇ覚まさねぇから、キスしたら目ぇ覚めっかと思って♪」
「ッ!!果てろ!!///」
「まぁまぁ、未遂に終わったんだし怒んなって。
好きな奴からキスされて目覚めるって定番だろ?」
「御伽噺のな!御伽噺の世界のな?!」
「だって獄寺あんな可愛いヤキモチやくぐらいだから、メルヘンチックなのかなって。」
「んなわけあっかバーカ!!」
「そうそう、さっきの話の続きだけどな、
やっぱり獄寺は俺のことが好きなんだと思うぜ?」
「だからなんでそうなんだよ!」
「だって・・・」
「のわっ!」
俺はイキナリ山本に腕をひっぱられて、まだ頭がぐらぐらしてて状況についていけなかった。
暖かくて柔らかい感じがした。
・・・認めたくないけど、俺は今山本に抱きしめられているらしい。
「獄寺、今嫌じゃないだろ?」
「は?早く離せよ馬鹿!」
どうしてだ、抱き寄せられた、こんなことが初めてだからか心臓がすごく痛い。
それと同時にすごくうるさい。
10代目とコイツが話しているところを見たときよりもずっと。
ずっと心臓がバクバクしててうるさくて、締め付けられるような感覚がする。
「そんなこと言ってっけど、獄寺の心臓がうるさい。
離さないでって言ってるみたいだぜ?」
「言ってねぇよ!!///寧ろ離せっつってんだよ!」
「獄寺はツンデレだからなー。」
「は?!んだと?んなわけあるか!」
「ツナのときだってそうらしいじゃねぇか?ツナんとこ殺そうとしたんだろ?
んで、今はツナにデレデレ。
・・・俺、実は相当ツナにイラついてんのな。」
強く締めていた腕をゆるめて、俺と視線を重ねた山本。
だけど腕はまだ俺の背中にまわしたままだった。
「別にそういうわけじゃねぇ!
なんでお前が10代目にイラつくんだよ?
いつも10代目とあんなに楽しそうに話して、挙句の果てには俺のことなんて忘れたように二人で盛り上がるくせに。」
「ッ!獄寺・・・!」
「んだよ。」
「獄寺、それ妬いてるって言ってるもんだぜ?」
「バっ!!違ぇよこの馬鹿!!///」
「あのな、俺がツナに話しかけるのは、獄寺とツナが話してるのが嫌だからなのな。」
「っ?!///」
んだよソレ!それこそ嫉妬してるようなもんじゃねぇか。
「早い話がツナに嫉妬してんのな、俺。」
マジかよ!
「獄寺は俺が好きで、俺も獄寺が好き。なぁ、獄寺。
俺達両想いだぜ?どうするっ?!」
「どうするもなにもねぇよ!大体、俺はお前が好きだなんて言ってねぇ。」
「ツーンデーレなとこーも魅力ーてーき♪」
(※わかる人だけ笑ってください)
「やめろ馬鹿!」
「わかってるって、獄寺。俺、お前のそういうとこも好きなのな。」
「全然わかってねぇ!!」
「とかいって、さっきから獄寺俺の腕解こうとしないのな。」
「そ・・・れは///」
それは、何なんだ?
確かに俺は背中に腕をまわされた状態のままだった。
「俺、腕に全然力いれてねーのに。」
「・・・わかんねぇ。」
「だから獄寺が俺のこと好きだから、拒絶したりしないんだって。
寧ろそのままでいたいんだって。」
「ソレは違ぇ!・・・と思う。」
「どっちなんだよ獄寺?」
「俺・・・は・・・・。」
どっちなんだ?
俺は、本当にコイツの言うとおり、コイツのことが好きなのか?
そういう趣味はないのか?
10代目が好きなわけではないのか?
そういう趣味があるのか?
笹川京子に惚れないのか?
あ・・・また・・・頭がぐるぐるしてきた・・・・俺・・・もう・・・・無理。
俺は身体の力がぬけて、山本に寄りかかる形になった。
山本は一瞬ビックリしたような表情をしたけど、俺を受け止めてくれた。
「獄寺っ?!おい、獄寺、大丈夫か獄寺?!獄寺ってば!ごくで・・・、」
また山本が俺の名前を呼んでいるのだけが聞こえて、俺の意識はだんだん遠のいていった。
結局ところ俺の本心はどうなんってんだ?
俺、山本のことが好きなのか?
わかんねぇ。
けど、この腕にはまだ包まれていたかった。
END