*イナズマイレブン*

□大好きなんだ!
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皆がキャラバンの中で眠る夜、午前1時過ぎ。
円堂は1人、キャラバンの上に上って空を見ては、沈んでいた。


『俺は・・・俺は・・・。』

「円堂?」


キャラバンの入り口が開く音がして、すぐに豪炎寺の声が聞こえた。


『ご、豪炎寺?!』

「ああ・・・。」


タン、タン、とリズムよく梯子をのぼり、円堂の隣に座る豪炎寺。


『どうしたんだよ?こんな時間に。』

「お前こそこんな時間に何してるんだよ。」

『あ、あぁ・・・ちょっと、考え事かな。』



「・・・なぁ、円堂。
昼間はああ言ってたが、本当は悔しいんじゃないのか?」

『・・・ははっ、そんなことかよ!
全然大丈夫だぜ?』

「俺の前でまで無理するなよ・・・。」

『豪炎寺・・・。』


豪炎寺の言葉に、円堂の瞳が揺れた。
月光に反射して光る円堂の涙は、耐え切れずに零れた。


『悔しいさ・・・本当は、悔しい。』

「・・・。」


涙を流し、拳を握り締める円堂に豪炎寺は何も言わなかった。


『俺が全然出来なかった技も、立向居はすぐにやってみせた。
きっとキーパーの素質、俺よりも遥かに高いんだよな。』

「円堂、それは違うと思うぞ?」

『慰めならよしてくれよ・・・。』

「あのな、円堂。
お前はゴッドハンドやマジン・ザ・ハンド、どうやって習得したんだ?」

『豪炎寺も知ってるだろ?
・・・じいちゃんのノート見て、毎日練習して、それでも出来なくて、
試合の中でやっと出来るようになった。
遅すぎる、よな。』

「じゃあ、立向居はどうやって習得したんだ?」

『俺の技を見て、練習した。』


それがどうしたんだ、そう言うかのように俯いた円堂。
しかし、豪炎寺は得意気に笑いを浮かべた。


「お前は、お祖父さんのノートをみたんだろ?
効果音とポイントの場所しか書いてない、あのノート。」

『・・・ああ。』

「立向居は、お前の技を、お前の姿を見て習ったんだろ?」

『・・・あ!』


ガバッと頭をあげ、豪炎寺を見る円堂。
豪炎寺は満天の星空を見上げて続ける。

「わかったか?
その違い、だろ。
構えも何もわかってないお前と、既に手本があるのを覚える立向居。
習得するまでに時間差があるのは当たり前だ。」

『豪炎寺・・・!』



円堂は零れる涙を拭いながら続けた。


『でもさ、綱海言ってたよな。
立向居がキーパーになれば雷門イレブンはもっと強くなれる、って。
鬼道も俺がキーパーなのは弱点だって言ってた。』

「はぁ・・・。」


溜息をついて、豪炎寺は円堂に言った。


「立向居がキーパーになるって言うのは、お前がリベロになるってことだろ。
お前がリベロになれば、更に強くなるってことだろ。」

『俺がリベロになれば強くなるっていうのはさ、俺がキーパーじゃなくなれば強くなるっていうことだろ?
やっぱり俺、元々キーパーの素質なんてなかったんだ。
努力しただけ無駄だったんだな。
やっぱり立向居・・・』

「円堂!!」


まるで狂ったかのように自分を悲観する円堂に耐え切れなくなったのか、豪炎寺は円堂の肩をつかんで、その名前を強く呼んだ。


『・・・豪炎寺ぃ・・・。』


円堂は、ただ泣くことしか出来なかった。


「なんでそんなにネガティブなんだよ。
いつものお前らしくない。」

『いつもの俺ってなんだよ!』

「いつものお前だよ!
馬鹿みたいに真っ直ぐで、人を疑うなんてことも知らない、絶対に諦めたり、嘆いたりなんてしない、
それがお前だろ、円堂!!」

『豪炎寺に今の俺の気持ちがわかるかよ!!』


円堂は豪炎寺の肩を押して、自分の肩を掴むその手を払いのけた。


「円堂・・・。」


豪炎寺の瞳が揺れる。


『俺は、雷門のキーパーだ・・・、キーパーなんだよ!
今までずっとキャプテンとして、キーパーとしてやってきたのに、どうして突然!!』

「それは・・・お前の才能を見込んで、だろ。」

『やっぱり俺にキーパーの才能なんてないんじゃないか!!』

「それは違う!」

『何が違うんだよ!!』


涙は、止まらなかった。





―――パシン






静寂な空間に、乾いた音が響いて、木霊した。







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