*イナズマイレブン*
□偽善者
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今日は、早くから目が覚めてしまって、家にいても特にすることもなかった。
だから、今日は早く練習を始めよう。
そう思って、僕は雷門中へと向かった。
『あっ、おはよう、豪炎寺君。』
部室に入ると豪炎寺君が新しいユニフォームに着替えているところだった。
豪「吹雪!今日は早いんだな。」
『ちょっと目が覚めちゃってね。
豪炎寺君はいつもこんなに早くきてるの?』
豪「まぁな、いつもは円堂もいるしな。」
いつもはキャプテンもいる、そう言って微笑した豪炎寺君。
こんなに朝早いなら、キャプテンと豪炎寺君はきっと2人っきりなんだろう。
何してるんだかわかったもんじゃない。
『新しいユニフォームってなんだか、わくわくするよね。』
豪「ああ、そうだな。
でも、俺は今までの雷門中のユニフォームが好きだ。
嫌なことも、嬉しかったことも、辛かったことも、このユニフォームには全部、刻まれてるんだ。」
そう言った豪炎寺君の手には、雷門中のユニフォームが握られていた。
『そうだね・・・いっぱい、大切な思い出が詰め込まれてるよね。
辛かったこと、か・・・僕は特にいっぱいありそうだな。』
ねぇ、豪炎寺君、その思い出の中には全部全部、キャプテンがいるんでしょう?
嫌なことにも、嬉しかったことにも、辛かったことにも、全部、全部。
豪「お前も、色々大変だったもんな。
俺だってそうだ。エイリアとの戦いで・・・俺はチームを離れた。
それに、転校してきたときにはサッカーを諦めていた、サッカーから逃げていた俺に、円堂はもう一度サッカーをあたえてくれた。
そんな大切な思い出も、全部このユニフォームは知ってるんだ。」
そう言ってまた嬉しそうに笑う。
やっぱり、キャプテンが大好きなんだね、豪炎寺君。
『じゃあ、僕のユニフォームには、豪炎寺君に助けられた思い出が刻まれてるのかな?』
僕は自分の鞄から、豪炎寺君と同じように雷門中のユニフォームを取り出し、広げてみた。
豪「助けたってほどでもないだろう?」
苦笑する豪炎寺君。だけど、僕は続ける。
『助けられたよ。富士山に行く前の日にも、僕は助けられた。
ジェネシスと戦って、僕がどうしようもない状況に陥ったときに、豪炎寺君はボールを通して、僕に仲間の大切さを教えてくれた。
僕の存在価値を、教えてくれたんだ。』
豪「俺はそんなすごいこと、していない。
お前の心を動かしたのも、円堂や、チームメイト全員の声だ。」
『ふふっ、謙虚なんだね?』
豪「どうかな?」
僕が笑ったら、豪炎寺君もクスッと小さく笑った。
円堂、円堂。
キャプテンの名前を、キミの口からきくのは凄く嫌だな。
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