ひらこ小説

□哀憎模様
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「…ッ………ゆ…るして…下さい…惣右…介、さ、まッ」


涙をながしてイかせて下さいと男に懇願する男。
―なんと情けないのだろう。




惣右介は笑う。そして、


「嫌です」


「なッ…」


限界だ。許して。お願いだから、俺を、許、し、て、


「惣右介ェ…」


涙が止まらない。もう理性なんか残っていなかった。
とにかくこのむずがゆいような感覚から、逃げ出したかった。
俺は、恥ずかしい、ねだるような声をだす。



「そんなにイきたいんですか?はしたない人ですね。」


惣右介が初めて下へ降りてくる。


「そ…すけ…」


惣右介を見上げる。
その顔は無表情で、怖かった。俺を冷たく見据えると、


俺の自身を、思い切り踏みつけた。




「っあ゛あ゛ああぁぁあぁ」



痛い、痛い、痛い


でも、


「そんなに気持ちよかったですか?随分とMっ気が強いんですね。」


俺は、絶頂を迎えていた。






































もう長いこと、惣右介はここに来ていない。
ある時を境に、ぴたりと来るのを止めた。
どれくらいの時がたったのかは、分からない。
外界との接触がないこの場所では、一分が百年にも、百年が一分にも感じられる。

惣右介がいない間も、俺の中のものは動き続けていた。


不規則に強くなったりしながら、媚薬に犯された俺を追い詰めていた。


もう吐き出すものも何もないのに、俺の自身は度々勃ち、何回目かも分からない、痛いだけの絶頂を迎える。
それの繰り返し。



「俺」の霊圧は存在し続けている。外界がどのようになっているか分からないが、俺の存在は消され、「俺」の居場所になっているのだろう。




俺は、何故ここにいるのだろう。喜助に見捨てられ、俺を閉じ込めた筈の惣右助にさえ、見放されている。
「俺」がみんなの元で生きているのなら、俺の存在は何?
「俺」は俺から創られたはずなのに。
「俺」が俺のクローンの筈なのに。



何故?どうして?





俺の居場所が、ない、の、?




脳にフラッシュする記憶。

―「俺」のもの、だっ、た







「俺」は喜助に抱かれていた。喜助は、優しく、慈しむように「俺」に触れる。


唐突に理解した。喜助は俺を愛していた。俺が、喜助を愛したように。
でも、喜助は惣右助に触れられた俺のことが嫌いだった。
だから、喜助は、自分の創り出した「俺」を、愛、したの、だ、






















惣右介が、やってきた。
どれくらいぶりだろう。
あんなことをされたのに、しばらくぶりの外界との掛け橋の訪れに、顔をほころばせた。
残る力を振り絞って顔をあげると、








ばしゃ





―…?





何だろうこの液体は。
臭いが鼻を突く。
これ、は、








惣右助は右手に持っていたバケツの中の液体をひっくり返し、左手に持っていた


た ま
い つ











熱い 熱い
熱い
熱い 熱い 熱い






惣右介が出て行く。
俺は、炎に包まれながら手を伸ばす―…









―…届か、な、い
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