たから箱

□真冬のホラー
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真冬のホラー

寒さが苦手な平子になくてはならないのがこたつだ。
冬場のお気に入りスポットである。いっそこたつで仕事をしたいくらいだ。
自堕落になるからと藍染は毎年出す度に小言を言う。こういうときの藍染は本当におかんみたいでうっとおしい。
さらにおかんみたいだと言ったらしゃぶってもいいですよと胸板をさらしてくるような頭の沸いた変態なのだ。
そんな藍染から解放され自室のこたつで寛ぐ瞬間は本当に極楽だ。冷え切った身体が足先から温まっていくのは本当に気持ちいい。
いそいそと茶を淹れ、みかんとせんべいを用意し、半纏を着込みお気に入りのジャズをかけた。リサから借りている小説でも読みながらダラリとこたつに篭もるコタツムリになるのだ。幸い明日は休みで起こしに来る副官もいない。
「よっこいせ」
ジジくさい声を出しながら平子は疲労を癒し寛ぐためにコタツに入ったその瞬間、

ありえない。

ありえない感触が平子の腹に当たったのだ。こたつ布団が丸みを帯びている。
コタツの足に当たる部分は木のはずなのに・・・
生暖かい・・・

「ひぎゃあああああああああああああ!!」

布団をめくり脱出した平子が見たのは光る眼鏡だった。
言わずもがな藍染だ。
藍染がコタツに入り込んでいたのだ。
恐怖が平子を襲った。目には涙が浮かぶ。
怖い。
虚と初めて戦ったときだってこんなに怖くはなかった。
「隊長!大丈夫ですか!」
「大丈夫やないわ!お前そんなとこでなにしてんねん!」
「いついかなるときも貴方を暖める存在でありたいのです」
「はよこたつから出てけえええ!」
もうやだ、この副官。
「お言葉ですが出て行くことはできません」
「お前・・・!」
「僕はコタツに入っているのではありません。僕自身がこたつなのです」
四つんばいの姿勢のまま真剣な表情で語る。
「隊長はこたつを追い出すことはありませんが僕を部屋から追い出すでしょう?それなら僕自身がこたつとなれば・・・」
最後まで言い終わる前に平子はハリセンで殴りつけた。
「痛い!」
平子はハリセンで藍染を乱打する。
「死ねぇぇ!死に腐れぇぇ!お前ほんまもんのこたつどこやったんじゃあ!」
「ぼ、僕の部屋、れす」
眼鏡にはひびが入り顔は腫れあがる。しかしそれでも藍染は動こうとしなかった。
「はよう消え失せんかい!このド変態がっ!」
「あ、足が痺れて・・・」
「・・・」
ピシャッ!
(隊長が出て行くという発想はなかった・・・僕の負けだ・・・。)

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