ひらこ小説
□哀憎模様
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目が覚めたら、そこは、真っ白な世界だった。
見たこともない部屋。ここは、どこだ。
寒い…白くて何も、見えない。とにかく起き上がらなければ。
ガシャ…
「…………」
何…だ…これ…は
「お目覚めですか」
降り注いでくる色気のある声。ば、と上を見上げれば、
そこには
「惣右介ッ………なんやねん…これは」
俺は全裸だった。手首には蛇のように鎖が絡みついていて、脚はぺたりと座り込んだ状態で、枷で直接床に縫い付けられていた。身動きをとることさえできない。
「どういうつもりや…」
惣右介を思い切り睨みつける。
「おや、随分と元気なんですね」
カチッ
惣右介の指が何かをスライドさせた。
「ぁ…は!?」
俺の中で何かが蠢く。
「どうされたんですか、隊長?」
惣右介は冷たい微笑を浮かべながら、言う。
「ソレが、そんなに悦いんですか?」
惣右介は手に持ったスイッチを見せつけるようにしながら、さらにスライドさせる。
「そんな、無機質なものが」
「あ ぁ あぁ あ あぁあッ」
駆け抜ける何かの感覚。
体をよじって逃れようとしたが、動かなかった。
「ひぁ…や…あ、ぁん」
こんなの、嫌、だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
助 て
け よ
「き…すけェ…」
頭に浮かぶ男の名を呟く。
助けて、欲しかった。
欲しかった、の、に
現れた喜助は
「藍染サン、どうスか、調子は?」
目の前が、真っ黒になるかと思った。見開いた目に映る視界が、滲んで、歪んだ。
「喜…助…?」
喜助は、ちら、とこっちを一瞥し、すぐに視線を惣右介に戻す。俺を、意識の端にも入れようとしない。まるで、居ないかのように扱う。喜助の纏う空気は、冷たく、俺を突き放した。
「なんで…」
信じてた、の、に、
喜助―…
「ああ、浦原隊長。万事上手くいってますよ。あの永久的媚薬も良い効き具合ですね。さすがです」
惣右介は笑う。
「そうっスか。それは良かった。あとは僕が平子サンを創っておきますから、好きなようにして下さい」
喜助も惣右介に笑いかける。
「ッ待ちい!どういうことやねん、喜助!!俺を創るって何…やぁ…ふあぁッ」
中の動きが激しくなる。
言葉の続きが、紡げない。
「貴方には関係のないことだ」
惣右介が言い、喜助は俺の方を見もせず、無言で出て行った。
あれから、どれくらいたったのだろう。ひよ里や拳西や、羅武、みんなは、どうしているのだろう。
喜助が一度だけ来たあのときから暫くして、「俺」の霊圧が現れた。俺と全く同じ霊圧。
喜助は「俺」を創ったのだ。きっと喜助の技術だったら簡単なことだろう。
藍染は、気まぐれにここへやってくる。
俺に触れることはせず、ただ俺の中のモノの振動を変えたりして、上から見ているだけだ。
「藍…染…」
「何ですか?」
カチッ
藍染の指はソレのスイッチを上に大きくスライドさせる。
「ひぅ…ぁああ…ッ」
俺の中のモノは、のたうち回って中に傷をつける。
その痛みすら、快感、だった。
「やッ…あぁ」
ふいにソレの動きが止まる。
惣右介は、笑っていた。
「何ですかその顔。やめて欲しいんでしょう?」
「そ、ん、な…」
冷たい微笑み。
「は、あ…いぜん…」
力が抜ける。
涙が膝に落ちた。滲んだ視界で、声のする方を見上げる。
「…許…し、て」
「違うでしょう『許してください惣右介様』でしょう?」
「っは、」
藍染を睨み付けてやる。
「イきたくないんですか」
惣右介の言っていた永久製媚薬とやら蝕まれた俺の体は、卑しくも求めていた。