ヤンメガ*シリーズ
□雨、早く止まないかな
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写真の中の姉弟は笑っていた。
手を繋いで、何がそんなに楽しいのか、と問いたくなるほどの笑顔。
(もう、この時には戻れない)
写真立ての中で少し色あせたその写真が、余計に遠い距離を実感させた。
「いつか、いつかと」
思っていた。
ずっと、思っていた。
思っていたけれど、それだけだった。
「もう遅い。取り返せない」
姉の笑顔はこれから、おれが手の届かない遠くに行ってしまうのだ。
写真の中の幼い子供と目があって、何も知らない無垢な顔をしているそいつに知らぬうちに顔が歪む。
(お前は無知だ。お前は無力だ。お前は、)
「おれは、」
(何も出来ない)
トントン、と扉を叩く音。
「!」
「葉様、お父上がお呼びで御座います」
「・・・ぁあ、すぐ行く」
写真立てを倒す。
子供の笑顔は、もう無かった。
ふと、窓の外を見れば、さっきよりも雨はひどくなっていた。
雨、早く止まないかな。