朧月夜
□Graduation
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「ちょっ……!待てってば!」
「駄目だ。俺ァ言いつけ通り大人しくしてただろう?次はテメェが果たす番だ」
「だからって……!」
今日は銀魂高校の卒業式。先刻まで生徒達と別れの挨拶を交わし……名残惜しそうに一人二人と校門を出ていくのを教室の窓から見送って。
次第に遠くなるざわめき。ガランとした教室の見回りを終え、最後に鍵をかけようとした時に開かれた扉。
「銀八ィ……約束だ」
眼帯に被われた左眼。だが右の瞳にはっきりと浮かぶ……熱。
そのまま教室の床に押し倒されて―――。
「ずっとこの時を待ち続けてたんだ……もう止まれねェ」
深い闇色の瞳。見上げる銀八の脳裏に過ぎる……三ヶ月程前の出来事。
ああ……あの時もこんな瞳をしていたな……。
―・―・―・―・―・―・―・
―――ガタッ!
響く物音。押し殺した声。荒い息遣い。
ここは……銀魂高校国語科資料室。
冬の陽はすっかりと落ち、窓からは街の灯が小さく見える。
薄暗い部屋の中、重なる二つの影。
「銀八ィ……」
影の一つが囁く。低く……しかし何処か甘いその声。眼の前で息を弾ませる銀色の髪の主にのみ向けられる―――極上の響き。
「今日こそ……テメェを貰う」
弧を描く唇が……はだけられた頸筋にゆっくりと迫る。ギリリ……と手首を掴む力が増して。
「構わねェだろう……?」
浮かび上がる白い肌はきめ細かく。微かに甘い薫が鼻腔を擽る。喉を鳴らし惹き寄せられるように……触れる寸前。
「いいわけねーだろ!何回言ったら学習するんだこのバカ杉ィィッッ!」
……銀八の膝蹴りが見事に高杉の股間に入った。