長編

□君と奏でるスケルツォ(山綱)
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雪が溶けて桜が咲いてそしてだんだんと汗ばむ季節へと移りゆく日々。


今日はセーターを着てくるのは失敗だったかと襟元を掴んでぱたぱたと扇いだ。







その横でぽちぽちと無言で指を動かしていた女子生徒がぱたんと勢いよく携帯を閉じてカバンへと投げ入れる。
それと同時にぽきんと芯が折れて2oぐらいの黒い先っぽがころころと真白い紙の上を、焦茶色の机上を転がって床に落下した。男子生徒はそれをゆっくりと目で追ってからまたかちかちと親指を押す。













放課後の教室には既に二人以外の人影すらなく、廊下やグラウンドから微かに声が反響しているだけである。






───そんな静かな空間を終わらせる言葉が唐突に響いた。













「…ねえ沢田、あんた好きなやついんの?」




「───へ?」





















今日4月24日の日直は黒川花と沢田綱吉。


そして、三時間目は何したっけ…とシャーペンを顎に当てて思い出そうとしていたところの突拍子もない問い。間抜けな声に伴った顔も見て黒川は呆れたように机に寄りかかりながら綱吉を見下ろした。











「だーかーらーっ!いるでしょ?好きな人ぐらい、」


「ちょっ、なっ何それ!そんな人、いるわけ」


「ある、でしょ?…んー……やっぱ今でも京子と付き合いたい?」








その質問に綱吉はこれでもか、というほど顔を赤らめた。あたふたとしている姿を見て聞いてるこっちが照れるわ、と黒川はため息をつく。







「なっ、きょ、京子ちゃん??!!違うよ、その、あああ憧れなんだってば!好き、とか…そのっ、ないから!!」


「ふーん?…まあそんなことだろうとは思ったけど。じゃあ誰?」


「…あのさあ…だからいないって、」


「じゃあさっ獄寺と付き合ってんの?」


「…はい?なんでそこで獄寺くん?」


「だってあいつ、あんたのこと10代目10代目ーってもうなんか、大好き!ってかんじじゃん?…てかあんたんちってヤクザとか酒蔵の家だっけ?…10代目、って」


「い!!?いやいや!ち、違うから!!ノリだよノリ!!…あだ名?みたいな?」


「あだ名あ?……まあいいや。…で?」


「付き合ってるわけないだろ!それにおれたち男だよ?黒川ってば冗談きついなー」


「…あいつも報われないなあ…かーわいそっ」













長い漆黒の髪をくるくると指に絡みつけながら黒川は机に座った。


その仕草がすごく女の子らしくて、綱吉はぼうっと遊ばれる髪を見つめる。









────うらやましい、






と、思った自分に綱吉ははっとした。


なんでこんなこと思うんだろう、ちっちゃな脳みそで過去に遡っていけば、ふと昨日と今日に起きたことを思い出す。





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